Vol.180 憲法9条・・・・・『もうひとつの改定案』も選択肢に!       ———憲法記念日の安倍首相ビデオメッセージを受けて

[その他政治・社会分野]

参院選(場合によっては衆参同日選)を約2ヶ月後に控えた今年の憲法記念日には、改憲派・護憲派双方の集会が全国各地で、例年にも増して盛大に開催されたと報じられています。

特に今年は、「任期中の改憲」を明言する安倍首相の執念を受け、改憲派の行動が全国的に一段と盛り上がっていたように感じています。

       

       (憲法改定についての私の基本的な考え方は、先月記しました

         Vol.179 “この世の『縦糸』と『横糸』(続)
                 ———憲法改定問題の『縦糸』と『横糸』“

        を、ご参照頂きたいと思いますが、その主旨は、

        ——“「改憲」か「護憲」か” という二者択一ではなく、
        ——“「改憲」も「護憲」も” を基本としつつ、
        ——しかし現時点では、国論を二分してまで「改憲」を議論する
          切迫した状況には無い
        ——いずれにせよ改憲論議は、“何の為に、どこを、どのように
           変えるか“ を明確にした上で行なうことが不可欠

         というものです)


その安倍首相は、都内で開かれた「公開憲法フォーラム」にビデオメッセージを寄せ、そのなかで、

    “自衛隊は創設後60年余が経過し、国民の9割以上の信頼を得ている
    ものの、今の憲法には『自衛隊』という言葉は無く、また
    「憲法学者の7割」が自衛隊は違憲の可能性があるとしている。

    『自衛隊は違憲かもしれない』と思われているままで本当に良いのか?
     国民的な議論に値する。

     憲法に指一本触れてはならない、議論すらしてはならないなどといった
     思考停止に陥ってはならない。“  

と熱く訴え、憲法9条の改定に強い意欲を示されました。


(尚、上記の如く首相は、「憲法学者の7割」が自衛隊には違憲の可能性があるとしていることを、9条改定の論拠の一つとされています。

しかし一方で首相は、「憲法学者の9割」が、集団的自衛権の行使を容認した一昨年7月の閣議決定及びそれに基づく安保法制を違憲の可能性があるとしていることについては、完全無視を決め込んでおり、何ともご都合主義で殆ど支離滅裂状態と言えます)


さて、問題の憲法9条の全文は次の通りですが、そこには首相の言われる如く『自衛隊』という言葉は無く、また『自衛権』についての言及もありません。


   第二章 戦争の放棄

   第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、
       国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、
       国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

     2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを
       保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


その9条の下わが国政府は、一昨年7月の閣議決定迄の数十年以上の長きにわたり、『自衛隊は認められるものの、集団的自衛権の行使は認められない』という憲法解釈を保持し、国民も、また諸外国も、その解釈を普く受け容れていたところです。


それに対し安倍首相は、その9条を、

  ——軍事裁判所を有する『国防軍』の創設
  ——所謂「フルスペック」の集団的自衛権行使容認
  ——海外での国際協調活動時における『国防軍』の武力行使容認

を柱とする『新9条』に改定することを目指してしておられ訳です。


しかしそれは、戦後70年以上にわたり『戦争をしない進んだ国』であり続けたわが国を、一転して『戦争をする普通の国』に完全に逆戻りさせるものであり、私はもちろん断固反対です。


       (上記『新9条』の詳細は、2012年4月に自民党が決定
        した、「日本国憲法改正草案」をご参照下さい。


        また、『戦争をする普通の国』に関しましては、

     Vol.171 “「戦争をしない進んだ国」と『戦争をする普通の国』
             ———安保法案の参院強行採決を前に思うこと“

        もご覧頂ければと思います)


しかし一方で私は、

    “今の憲法には『自衛隊』という言葉がない。それで本当に良いのか? 
    憲法に指一本触れてはならないというのは思考停止! 代案を!“ 

と、情緒的かつ饒舌に挑発する安倍首相に対し、『改定反対、9条死守!』とだけ言っているだけで本当に対抗出来るか? 9条を守ることが本当に可能か? 
正直なところ今や疑問無しとしません。


ここは、『改定反対』を基本としつつも、「もし変える場合には、こう変える」という、『もうひとつの改定案』(以下『改定9条』)を策定し、国民的議論の場に呈示する方が良いのではないかと思い始めています。

以下が、その『改定9条』(私案)ですが、内容的には目新しいものでは全く無く、わが国政府の、一昨年7月迄の数十年以上に亘る憲法解釈そのものであり、それを単に明文化しただけです(現9条にアンダーライン部分2カ所を挿入)。

   第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、
       国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、
       集団的自衛権の行使を含め、国際紛争を解決する手段としては、
       永久にこれを放棄する。

     2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、
       専守防衛のための自衛組織を除き、これを保持しない。
       国の交戦権は、これを認めない。


(因みに私は、自民・公明両党の国会議員に、『新9条』と、『改定9条』のどちらに賛成か無記名投票を行なったら、『改定9条』の賛成者がかなり出るものと確信しています。

一方、民進党のなかからは、『新9条』の賛成者が出ることもまた間違いないところです。

そして本当は、それを主軸として与野党再編がなされるのがわが国政治にとって最も望ましいと考えています)


参院選(あるいは衆参同日選)まであと約2ヶ月。

安倍首相の挑発的ビデオメッセージを敢えて真正面から受け止め、『新9条』か『改定9条』かについて冷静で解り易い国民的議論が繰り広げられることを切に願うものです。


折しも来週18日(水)には、今年初めての党首討論が予定されています。
先ずはその場で、この問題についての実質的論戦がスタートすることを強く要望致します。

                           (完)

2016年05月11日

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