Vol.179 この世の『縦糸』と『横糸』(続)                     ーーー憲法改定問題の『縦糸』と『横糸』

[「この世」シリーズ]

前稿、Vol.178 “この世の『縦糸』と『横糸』 ———二つの糸をバランス良く織り成して「仕合わせ」に!” では、「物と心」について、また「保守とリベラル」、「国家と国民」、「中央と地方」、「日米外交と近隣外交」、「グローバルとローカル」について、更には「男と女」について、いずれも前者を『縦糸』、後者を『横糸』と位置づけた上で、

大切なのは、“『縦糸』か、『横糸』か” という二者択一ではなく、

“『縦糸』も、『横糸』も” であり、“縦と横の二つの糸がバランス良く織り成されることによって、「仕合わせ」がもたらされる” 旨、記させて頂きました。

本稿はその続編として、今夏の参院選(あるいは衆参同日選)の争点の一つに急浮上している憲法改定問題について、“「護憲」を『縦糸』、「改憲」を『横糸』” と見立て、思うところを記させて頂きたいと思います。

結論から申せば、大切なことはやはりここでも、

“『縦糸』か、『横糸』か、即ち、「護憲」か、「改憲」か” という単純乱暴な二者択一ではなく、

“『縦糸』も、『横糸』も” であり、「護憲」と「改憲」という二つの『糸』を出来るだけバランス良く織り上げて、憲法の「時代性と完成度」を高めてゆくことが、この問題の基本と考えるものです。


そしてその上で、『さてしからばこの問題、今この時点ではどうすべきか?』について私は、憲法9条はもとより、昨今俎上に載っている緊急事態条項創設問題も含め、

『今、国論を二分し急いで改憲を議論する差し迫った状況には全く無い。優先して取り組むべき政治課題は他に幾つもある』と確信しています。


さて、ここに来て憲法改定問題が国政選挙の争点に急浮上しているのは、ひとえに安倍首相が『在任中の改憲』を今国会の場で何度も唱えられているからに他なりません。

現憲法の「どこをどう変えるか」は二の次にして、「ともかく改憲」というのが、わが国超保守主義者の方々の積年の野望ですが、その唯一最大の理由は、『現憲法は占領下に作られ、一方的に押しつけられたものである』という認識です。

なかでもかねがね『戦後レジームからの脱却』を提唱されている安倍首相にとっては、『戦後レジーム』のいわば根幹である現憲法を改定することは悲願中の悲願であり、そこには「護憲」という『縦糸』は初めから存在していないと言えます。

これは明らかに、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」に特に課せられている「憲法尊重擁護義務」(憲法第99条)に違反するものと言えますが、『押しつけられたもの』として内心では現憲法を認めない人々にとっては、その一条項に違反することなどは大した問題ではないということなのでありましょう。


安倍首相はしばしば声高に、

『現憲法に指一本触れてはならないと考えるのは思考停止!』、
『改憲を議論することが間違っていると考えること自体、思考停止!』

と主張されますが、その主張そのものには私も賛成です。


ただ、そう主張される安倍首相に対しては、同時に次の様に申し上げたいと思います。

『占領下に作られ押しつけられたものだから変えるべきと考えるのは思考停止!』、
『どこをどう変えるかを明確にしないまま「在任中の改憲」を唱えること自体、思考停止!』


(尚、自民党には2012年作成の極めて強権的な「日本国憲法改正草案」がありますが、谷垣幹事長によれば、『あれは野党時代に作成したものであり、少しエッジを利かせて問題提起した』とのことで、政権与党の立場での責任ある本気の提案では無いこと明らかです)


他方、『現憲法には指一本触れてはならない!』とする「護憲原理主義」の方々も、上記「改憲ありきグループ」の方々同様、極めて頑なで独り善がりと言わざるを得ません。

現憲法には改正条項という『横糸』(憲法第96条)が初めから織り込まれていることからも、それは決して「不磨の大典」ではありません。

私たちを取り巻く環境の変化、時代の要請を鋭敏に受け止め、「改憲」にも柔軟に対処することは、「憲法と国民との一体性」を将来にわたり保持してゆく上で必要不可欠と考えます。


この点、公明党は、

“「国民主権」・「恒久平和主義」・「基本的人権の尊重」という現憲法の三大原理は堅守しつつ、例えば環境権など新たな理念や条項を加える” 

という「加憲」を党の公約とされていますが、それまさに、“「護憲」も「改憲」も”、“『縦糸』も『横糸』も” であり、憲法に対する基本姿勢としては極めて真っ当であり高く評価するものです。

ところがその公明党は、安倍首相に屈して、「恒久平和主義」の明文条項である憲法第9条の解釈改憲に賛成し、集団的自衛権の行使容認に加担してしまった訳で、明らかに言行不一致、公約違反と言えます。

「平和の党」の看板に偽りありで、返す返すも残念至極です。


     (尚、上記経緯により成立した「安保法制」は去る3月29日、
      施行されましたが、日本弁護士連合会(日弁連)は同日、
      
      “安保法制施行に抗議しその適用・運用に反対する会長声明”

      を発表しています。

      そこには、恒久平和主義、解釈改憲、集団的自衛権、立憲主義の
      ことなどが、要領よくコンパクトに纏められています。
      ご一読をお奨め致します)


参院選(あるいは衆参同日選)が迫るにつれ、「改憲」問題が一段と騒がしくなることが予想されますが、最も重要なことは『何のために、どこを、どのように変えるか』という「改憲の中身」・『横糸の中身』であり、中身無きまま改憲を争点化したり、訴えたりすることは全く無意味であることを、有権者は肝に銘じておく必要があると考えるものです。

                         (完)

2016年04月02日

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