Vol.165 「重無期刑」創設法案の今国会中の上程・成立を!        ———大きく傷ついたわが国のイメージ回復の一策としても

[死刑制度関連]

やや旧聞に属しますが、わが国死刑制度を巡る極めて大きなニュースが、年明け以降二つありました(詳細後述)。

私は、その二つの出来事から導き出される答えという観点からも、今年こそ「重無期刑」(仮釈放の無い終身刑)が創設されることを改めて強く願うものです。


創設法案は、「死刑廃止を推進する議員連盟」(会長亀井静香議員)が核となって議員立法で上程予定とのことですが、亀井会長には是非、いわば最後の大仕事を何としてもやり遂げて頂きたく大いに期待を致しております。


     (死刑制度に関する私の基本的な考え方は、11年前のこのサイト
      立ち上げ時にアップした、

         Vol.5 “死刑を廃止し、終身刑の創設を”

      に記しました通りです。


      ただ、わが国の現状を見渡した場合、残念ながら一足飛びに
      死刑廃止はなかなか難しいと思われるだけに、現実的次善策として
      死刑を存置したまま「重無期刑」を創設する道に活路を見出す
      ものです。

      このあたりに関しましては、2008年5月に記しました、

     Vol.58 “超党派議連「量刑制度を考える会」(仮称)に期待!”

      をご参照頂ければと思います)


さて二つの大ニュースですが、その一つ目は内閣府が去る1月末に発表した「基本的法制度に関する世論調査」に関してです。


この調査は、死刑制度及び犯罪の処罰についての国民の意識を調べ、刑事司法に関する今後の施策の参考とすべく、内閣府が5年毎に実施しているもので、今回発表されたのは、昨年11月の調査結果です。


今回の結果が特に注目されていたのは、死刑の存廃に関する設問で、調査開始以来初めて「仮釈放のない終身刑(「重無期刑」)の導入」を前提とする問いが加えられた為です。


   (因みに、これ迄の調査は、“「死刑」か、あるいは「仮釈放のある無期刑」か” という現行刑法規定を前提に、死刑存廃の意見を問うものであり、
結果は、『死刑もやむを得ない』との意見がこのところ継続的に80%を超えているのに対し、『死刑は廃止すべき』は10%未満となっています。

そして政府はこの結果に基づき、国連やEC等に対し『わが国世論の大勢は、死刑の存置を支持している』と強弁してきているところです。


しかしその設問は前提が不十分との指摘がかねてよりなされており、それを受け今回ようやく、“「仮釈放のない終身刑」の導入” をも前提に、死刑存廃の意見が調査されたものです)


さて注目されたその結果は、


  ー終身刑が導入されるならば、死刑を廃止する方がよい 37.7%
  ー終身刑が導入されても、死刑を廃止しない方がよい』 51.5%


であり、『廃止 10%未満、 存置 80%超』というこれ迄の調査結果とは大きく異なるものでした。

(これを男女別に見ますと、女性では廃止 42.1%、廃止しない 44.6% と、存廃ほぼ拮抗しています)


この結果からすれば、『世論の大勢は、死刑の存置を支持している』というこれ迄の政府説明は、もはや維持出来ないこと明白であると共に、『世論は「重無期刑」の創設を期待している』と容易に推認出来ると考えます。


今回示された『新しい世論』への迅速・的確な対応が求められるところです。


ニュースの二つ目は、裁判員裁判がらみです。


2009年から始まった裁判員裁判の下、これまでに22件の死刑判決が出されていますが、うち高裁が無期懲役に減刑した3件について、最高裁は先月上旬までにいずれも二審の判断を支持する決定を下し、裁判員裁判の死刑判決破棄が確定したことです。


一般市民である裁判員が、悩みに悩み苦渋・苦悶の末に出した死刑判決が破棄されてしまうのは、裁判員裁判の目的に照らしても、当事者・関係者の方々にとっては何とも割り切れず、そのことが更なる苦悩をもたらすとも考えられます。

私は、去る2010年11月の裁判員裁判初めての死刑判決を受け、Vol.101 “「不殺生戒」を今あらためて(その2)” と題する思いをアップし、そのなかで、

    “もし「死刑」という刑がわが国に存在しなければ、
    一般市民が「殺生」に加担しなくても済んだ。
    ご遺族が一般市民をも巻き込んでまで「殺生」に加担することはない”

と記したところです。

裁判員の方々の苦悩の最大原因が、「死刑」という刑の存在そのものであることは論を俟ちませんが、それに加え、現実の裁判では、“「死刑」か、あるいは「仮釈放のある無期刑」か” という『法律上の大きなギャップ』の下で選択を強いられていることも苦悩の一因と思っています。

そして、その『大きなギャップ』こそが、今回の死刑判決破棄という事態の遠因とも言えます。


裁判員の方々の苦悩を少しでも軽減する為にも、そして裁判員裁判の信頼性、実効性をあげる為にも、1日も早く「重無期刑」を創設し、「死刑」と「無期刑」との間の『大きなギャップ』を埋める必要があると考えるものです。


さて、早いもので第2次安倍政権誕生から既に2年強。


残念ながらこの間に、「平和国家日本」の根幹は大きく揺らぎ、加えて、国中に「反教養主義」、「反知性主義」と呼べるような空気・風潮が急速に蔓延しつつあります。

そういう状況下、長年手つかずの死刑制度改革に何はともあれ今乗り出すことは、この2年間で大きく毀損したわが国のイメージを回復する効果があること間違いありません。


立法府・行政府の「知性主義」に基づく俊敏な対応を強く求めるものです。


尚、「重無期刑」の創設に関し、日本弁護士連合会(日弁連)は去る2008年11月、これに反対する意見書(「量刑制度を考える超党派の会の刑法等の一部を改正する法律案(終身刑導入関係)」に対する意見書)を発表しています。


私はそれに対し翌月、Vol.70 “日弁連の終身刑創設反対意見に異議あり!”と題する私見をアップしたところですが、
日弁連はその後の情勢変化や、今回の二つのニュースを踏まえても、上記反対意見を引き続き維持する方針なのかどうか、是非知りたいところです。

                             (完)

2015年03月10日

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