Vol.149 「今年の漢字」は『国』! ーーー第2次安倍内閣のこと、「ポスト近代国家」のこと、など
日本漢字能力検定協会の「今年の漢字」は、先週『輪』に決まりましたが、私は、第2次安倍内閣1年目であるこの2013年は、『国』が最もふさわしいと思っています。
『国』はもちろん「国家」の『国』であり、それは得てして「国民」と対極をなすものと言えますが、「国家機密」・「国家安保戦略」・「国益」・「国権」・「国防軍」・「国境線」・「愛国心」・・・などなど、今年ほど「国民」が『国』を意識させられた年は近来稀です。
しかし実は、今年は単にその始まりに過ぎず、安倍内閣が続く限り、「国権」はますます強化され、わが国は『国家優先の国』に、そして再び『戦争をする普通の国』に舞い戻ってしまうこと必定です。
“「近代国家」から「ポスト近代国家」へ” が、間違いなく世界の潮流であるなか、ひとりわが国のみが時代遅れの「近代国家」に逆戻りをし始めた訳ですが、
はたして私たちは、このまま “『輪』になって” その道を突き進んで行くのか? あるいは冷静に立ち止まることが出来るのか?
私は来年が、その大きな分かれ道の年になるものと考えています。
(“「近代国家」から「ポスト近代国家」へ” は、イギリスの著名な
外交官で、EU本部とも深く係わっている ロバート・クーパー
(1947〜 )の提唱によるものです。
彼は、国家としての発展度・成熟度を基準に、世界を
「プレ近代国家」(Pre-Modern State)、
「近代国家」(Modern State)、
「ポスト近代国家」(Post-Modern State)、に三分類し、
「近代国家」とは:
“ナショナリズムと好戦的な性質を備え、自国の存在を保障する
手段として軍事力に依存する国民国家“、
一方、その進歩形である「ポスト近代国家」は:
“安全保障に関して、軍事力よりも、あらゆることにオープンで
あること、透明性を示すこと、良好な政治関係を築くことに
重点を置く“とし、 今やヨーロッパでは、
“国家は必要不可欠な政治の枠組みとして残っているが、排他的
な性格は薄れ、よりオープンな存在になっている“
と記していますーーー『国家の崩壊』日本経済新聞出版社)
たしかにわが国の隣には、巨大な「プレ近代国家」が存在し、情勢はヨーロッパとは大きく異なります。
しかし、だからといってわが国が「近代国家」に逆戻りをして周辺の「プレ近代国家」群と対峙しても、事態の解決には全く繋がらないこと明白です。
以下は、上記『国家の崩壊』の “日本語版への序文” に記されているロバート・クーパーの提言です。
彼は、東京のイギリス大使館にも勤務経験があり、またパートナーは日本人女性——世界的ピアニストの内田光子さんーーということもあって、卓越した知日家でもあり、その発言は傾聴に値します。
“日本は、近代化とナショナリズムをヨーロッパから学んだ。
今度は、日本がポスト近代化をアジアへ広めてはどうだろうか?
そのために、日本は今こそ、政治的信用を築くための体系的で
積極的な長期政策に着手すべきである。“
“これまでに共有されてきた長い歴史と膨大な文化を考えれば、
北東アジアで共通のアイデンティティをゆっくりと構築していく
ことを想像するのは不可能ではない。
より幅広いアイデンティティを持つとは、自分自身をより幅広い
概念でとらえることである。
それは排他的なナショナリズムから生まれるアイデンティティ
からの解放だ。
これもまた、平和の礎となろう。“
“ナショナリズム、共産主義、さらに近代という概念そのものも、
すべてヨーロッパで生まれた思想だが、それがアジアの状況に
合わせて改変されていった。
日本はそれらの多くを、初めてアジアに広めた国だった。
日本こそ、アジア的ポスト近代国家の唱道者になり得る国なので
ある。“
翻って永田町。
現在の野党に大きな期待が持てぬこと明白です。
時計の針を逆転させる愚と訣別し、「ポスト近代国家」としての成熟度を高め、そのアジアへの伝播に長期的に取り組むべく、
来年は、自民党内リベラル勢力が、公明党を触媒として覚醒し、蹶起することを強く期待するものです。
(尚、「北東アジアとヨーロッパ」という点に関しましては、
EUのノーベル平和賞受賞を受け、昨年11月に記しました
下記もご参照頂ければと思います。
Vol.133 “「日・中・韓・北朝鮮」と「独・仏 そしてEU」”
文中「EUの父」リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギーの
母親である青山光子さんにも触れましたが、
ロバート・クーパーのパートナーもやはり光子さん!
深い縁(えにし)です。
また末尾には、クーデンホーフ=カレルギーにまつわる
畏友寺島実郎さんの高校生時代のエピソードも記させて頂いて
おります)
(完)
2013年12月18日
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