Vol.147 『小善』と『大善』                             ———信玄の言葉、ガンディーの予言など

[その他政治・社会分野]

『小善』、『大善』ということに関し、戦国の武将武田信玄(晴信)が次のように語ったと伝えられています。


     “小善は大悪に似て、大善は非情に似たり”


「善いと思えることでも、後々大きな悪につながるものがある。
そういう善は『小善』———まやかしの善———である。

一方、『大善』———本物の善———は、時に『非情』に映ることもある」という意味と言えます。


卑近な例としては、愛犬が欲しがるからといって、のべつ幕無く食物を与えるのは『小善』であり、『大悪』。

いくら欲しがっても、またどんなに甘えてきても、定時・定量以外は『非情』に撥ね付けるのが『大善』ということになります。


『小善』は、相手が喜び自己満足も得られるだけに、ついつい気軽・気楽に行ってしまいますが、いずれ必ずツケが回って来ます。

「これは『小善』ではないか?」、「『大悪』につながるものではないか?」と常に自問自答する姿勢が肝要と言えます。

一方、『大善』の方は、時に心を鬼にし、『非情』に振る舞う冷徹さが求められることからも、言うは易く行うは難しの面があります。

また当然ながら、『非情』の全てが『大善』では無く、その大半は『大善』とは無縁の単なるいじめやいやがらせ、はたまた犯罪行為です。
つまり『非情』には、「善い非情」と「悪い非情」とがある訳で、その見極めが重要ということになります。


政治の分野における典型的な『小善』は、将来展望無きバラマキ予算と言えます。どう見ても『大悪』です。

一方、「『大善』の為には敢えて『非情』も断行する」と固く決意をしたとしても、本当に必要な福祉まで切り捨ててしまう様な「悪い非情」に陥っては、結局『大悪』になってしまいます。

『大善政治』の難しいところです。


『小善』と『大善』は企業経営にもあてはまります。


京セラ創業者で経営塾「盛和塾」主宰の稲盛和夫先生は、職場における人材育成・リーダーのあり方等を例に、「『小善』の戒めと、『大善』の奨め」を繰り返し説いておられます。

強い共感を覚えます。

      (尚、その一端は、先生のオフィシャルサイト上の、
       “フィロソフィキーワード”、『小善は大悪に似たり』
       記されています)

さてしからば、『小善』と『大善』を分けるものは何か?


私は一つの重要な物差しとして「長期的視点の有無」を挙げたいと思います。


目先ばかりで長期的視点に欠けるのが『小善』。

それに対し『大善』とは、「過去を含む長期時間軸に照らして鳥瞰的に判断し、正しいと思われるもの」と考えています。

(尚、その点で言えば、長期どころか10万年という気が遠くなる程の超々長期にわたり危険物質を残す「原発」という代物は、『小善』どころか善のかけらも無い『超々大悪』と言えます)


『大悪』で思い浮かびますのは、インド独立の父マハトマ・ガンディー(1869〜1948)の予言です。


彼は今から90年程前に、資本主義社会はこのまま進めば、“Seven Social Sins”(「七つの社会的大罪」)が蔓延するに違いないと警告を発しています。


以下が、その “Seven Social Sins” ですが、わが国を含む先進各国の現状を見るにつけ、彼の慧眼には改めて驚愕致します。
(尚、邦訳と順番は筆者による)

  1. Politics without principle   ———政治に哲学が無い罪

  2. Commerce without morality  ———経済にモラルが無い罪

  3. Science without humanity   ———科学に人間性が無い罪

  4. Worship without sacrifice    ———禁欲無く神だのみをする罪

  5. Wealth without work    ———汗水たらさず富を得んとする罪

  6. Knowledge without character  ———知識はあっても品性が無い罪

  7. Pleasure without conscience  ———自制心無く欲望を追求する罪


     (この点やや詳しくは、5年前に記しました、

      Vol.67“「七つの社会的大罪(Seven Social Sins)」
   ———マハトマ・ガンディーの警告“
 を
     
      ご覧頂きたいと思います)


さて、上記「社会的大罪」をそっくり裏返しますと次の七つになります。
私はそれを「七つの『社会的大善』」と呼びたいと思います。


『社会的大善』の復元が強く望まれるところですが、先進各国おしなべてほぼガンディーの予言通りになってしまっている現在、資本主義システムを根こそぎ変えない限りは、復元は相当難しいものと考えています。


      1. 哲学のある政治

      2. 倫理第一の経済

      3. 人間性豊かな科学

      4. 献身を伴う信仰

      5. 働いて築く富

      6. 品格を備えた知識

      7. 抑制のきいた悦楽


                            (完)

2013年09月08日

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