Vol.141 憲法96条改正問題に関して                        ———発議要件緩和なら、国民投票を2/3に!

[その他政治・社会分野]

歴史認識や靖国問題を巡る安倍首相の昨今の言動は、目に余るものがあります。


しかし、内閣支持率は高止まりし、わが国メディアの多くも事を荒立てず、さながら『一億総右傾化』の様相を呈しています。

私は昨年12月の総選挙直後、“『リベラル受難の時代』が今後またかなり長期間続く” と記させて頂きましたが、
Vol.135 “「よくぞこれほど、、、、、」 ———総選挙結果に思う” をご参照下さい)

現実は、『リベラル受難』どころか、『リベラル消滅』であり、「民意の浮動性」を改めて強く感じているところです。

そうした状況下、改憲気運もかつてない高まりを見せており、7月の参院選後は、改憲勢力が参議院でも2/3を上回る勢いです。

安倍首相が目論む憲法96条の先行改正がいよいよ現実味を帯びてきており、あれよあれよという間に、憲法改正の発議要件だけが緩和されてしまう事態を心底危惧しています。


さて憲法の改正について、憲法96条は、

   ・〈衆参それぞれの2/3 + 国民投票の1/2〉 の賛成

と定めておりますが、これは憲法の最高法規性・安定性を担保するために、その改正に対しては、

   (1)代表民主制に加え、例外的に【直接民主制】も導入する
   (2)代表民主制は、2/3の【特別多数決】とする

という二つのハードルを課しているものです。

しかし【直接民主制】に関しては、現行の「憲法改正手続法」には国民投票の最低投票率の規定が無いこと、投票は国会発議後2〜6ヶ月の短期間に行われること等、大きな問題点が存在します。

加えて、前記した「民意の浮動性」も考慮に入れますと、【単純多数決】でのこの【直接民主制】の導入は、憲法の最高法規性・安定性を担保するには極めて不十分と断ぜざるを得ず、実質的な担保は上記(2)のみ、即ち、
〈衆参それぞれの2/3〉 が、唯一のハードルと言えます。


そういう実態を踏まえれば、改正発議要件を、〈衆参それぞれの1/2〉 に緩和する安倍首相主導の改正案は、憲法の最高法規性・安定性を自ら否定するものであること明白であり、到底許容出来るものではありません。


ただ他方、『改正のハードルが高過ぎて、国民が憲法に対して意思表示する機会が事実上奪われている』という首相発言、即ち、現規定では、折角例外的に導入されている【直接民主制】が機能するに到らないという指摘には一理あり、重く受け止める必要があると考えます。


政治は、ITの更なる発達と主権者の意識の向上とが相俟って、中長期的には【直接民主制】が中心になってゆくと想定されるなか、先駆的なこの96条を、憲法の最高法規性・安定性が損なわれないような形で更に一歩前に進めることも十分検討されるべきと考えます。


具体的には、改正発議は首相の望む通り、〈衆参それぞれの1/2〉 にハードルを下げ、一方国民投票は、上記の現行手続法上の問題点等を解決した上で、
〈2/3の【特別多数決】〉 とする、という改正案になります。


参院選が近づくにつれ、益々高まるであろう96条改正論議。


選択肢は、現行の、

 ・〈衆参それぞれの2/3 + 国民投票の1/2〉 の維持か、あるいは、

比重を【直接民主制】に移し、

 ・〈衆参それぞれの1/2 + 国民投票の2/3〉 に変えるか、

のいずれかであり、

〈衆参それぞれの1/2 + 国民投票の1/2〉 は、立憲主義の原則に背き、選択肢としての適格性に欠けることを銘記すべきと考えます。

                             (完)

2013年05月06日

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