Vol.136 日本と韓国、『死刑のある国』と『死刑を止めた国』           ーー死刑を巡るアメリカの最新動向等と共に、、、

[死刑制度関連]

昨年は、わが国始め世界各国でトップリーダーの交代(あるいは再任)が決まりましたが、うち特筆すべきは韓国で女性大統領が選出されたことと考えています。

女性大統領はアメリカでさえ未実現、いわんやわが国の首相に女性が就任することは近い将来とても無理と思われるなか、隣国韓国の、この面での先進性には目を見張ります。


先進性という点ではもう一つ、韓国は5年前から『死刑廃止国』の仲間入りをしていることも挙げられます。

死刑存廃国に関しては、国際的には次の4つに分類されており、うち(1)〜(3)までが『死刑廃止国』とされています(右側は、昨年6月現在の国数)


  (1)あらゆる犯罪に対して死刑を廃止した国    97
  (2)通常の犯罪に対してのみ廃止した国       8
  (3)事実上廃止した国              36 
               (『死刑廃止国』合計 141)
  (4)存置国                   57


「事実上廃止した国」とは、「通常の犯罪に対し死刑を存置しているものの、過去10年間死刑執行がなされておらず、死刑執行をしない政策または確立した慣例を持っていると思われる国」であり、
1997年末の執行を最後に満15年間、意図をもって執行をしていないと見なされている韓国は、5年前から『死刑廃止国』と位置づけられています。


(尚、上記4分類の国別リストは、
アムネスティ・インターナショナル日本 死刑廃止ネットワークセンター
のサイトに掲載されています)


わが国一部産業分野ではここ十年来、韓国に追い越されるケースが散見されますが、女性トップリーダーの具現・死刑廃止国への移行の2点でも明らかに韓国に先を越された訳で、私たちはこの事実を謙虚に重く受け止める必要があると考えます。


(尚、去る12月8日東京で、「死刑を止めた国・韓国」の出版記念会が開かれました。

私は参加出来ませんでしたが、著者の韓国東国大学朴秉植(パクヒョンショク)教授の約1時間に亘る記念講演(日本語)が、“死刑廃止チャンネル” にアップされています。
特に興味を引くのは、韓国・EU間FTA交渉の過程で、EU側が韓国に対し死刑執行停止の確認を求めていたことです)


さて上記の様に、死刑存置国は現在世界198ヵ国中57ヵ国ですが、例えば6年前の2006年末には、世界197ヵ国中、存置69ヵ国、さかのぼって33年前の1980年には、世界165ヵ国中、存置が128ヵ国でした。

これからも明らかな通り、「死刑廃止」は間違いなく世界の潮流です。


一方、現在の存置57ヵ国のうち、先進国は日本とアメリカの2国だけですが、そのアメリカでは近年、死刑執行・死刑判決ともに激減しており、大きな地殻変動が起きつつあります。


アメリカの最新動向につきましては、NPO「死刑廃止センター」(Death Penalty Information Center—DPIC)が、昨年12月に公表した「2012年 年末報告」(“The Death Penalty in 2012 : Year End Report”)をご参照頂きたいと思いますが、その主要点は次の通りです。


(1)コネティカット州が2012年に死刑廃止を決定。
   これにより廃止州は1/3を超え、17州に。存置は33州。
   (過去5年で、ニューヨーク・ニュージャージー・ニューメキシコ・ 
    イリノイ・コネティカットの5州が廃止)

(2)存置33州のうち、2012年に死刑を執行したのは9州のみ。
   執行合計は43件(うち3/4が4州に集中)。
   これは2000年(85件)の半分。

(3)存置33州のうちの13州では過去5年間死刑執行無し。
   その13州に廃止17州を加えた計30州(全体の6割)で、過去
   5年間執行が無かったことになる。

(4)2012年の死刑判決は77件(うち2/3は4州に集中)。
   2000年(224件)のほぼ1/3。

(5)メリーランド・コロラド・ニューハンプシャーなどの州でも、廃止に
   向けた手続きが近く始まる見込み。

(6)『死刑は今や、アメリカの刑事司法システムのなかで、ますます時代遅れ
   の存在に見える。』
   (”the death penalty appears to be an increasingly irrelevant
component of our criminal system")
   


DPICによれば、この年末報告は国内外のメディアで幅広く取り上げられ、多くの新聞が、報告で提起された諸課題について社説で論じているとのことです。
(ただし日本のメディアでは殆ど報じられていません)


うちニューヨーク・タイムズは、去る1月2日付けで「アメリカの死刑からの撤退」と題する社説を掲げ、
死刑に対する世の中の価値規準は進化しており、連邦最高裁は『死刑は残酷で異常であり、廃止すべし』と認定すべきである旨、明快に主張をしています。


死刑全廃に向け、アメリカが大きく動き出したことは間違いないところです。

(ニューヨーク・タイムズの社説全文は、
“America’s Retreat From the Death Penalty” をご覧下さい)


翻って日本。


民主党への政権交代直後には、この問題についても変化の兆しが感じられましたが、その後は元の木阿弥、今や完全に検察・法務省ペースに戻ってしまいました。

政権再交代後の今年は死刑執行ラッシュになりそうな雲行きです。


加えて、安倍内閣に対しては、「右傾化」・「軍国化」というイメージが国際的にも固まりつつあり、世界の人々の目には、わが国が、『死刑を止めた女性大統領の国』と極めて対照的に醜く映ることが大いに危惧されます。

安倍首相は、前回の首相時代には、しきりに『美しい国』を唱えておられましたが、私はそれも受け、丁度6年前に、Vol.37 “「美しい国」なら死刑の廃止を!”とアピール致しました。

今回は、『国益を守る』ことを重ねて強調されていますが、死刑を存置し続けることが、国益の阻害に繋がりかねないことも十分認識しておく必要があると考えます。


『先進国(OECD加盟34ヵ国)のなかで死刑のあるのは唯一日本のみ』という事態だけは何としても避けねばならず、この面での安倍首相の真のリーダーシップを強く求めるものです。

                           (完)

2013年01月06日

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