Vol.132 『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』文庫本発行!(続)            ——大沼芳徳さんのエッセイ「林住期の贈り物」ご紹介

[その他スピリチュアル分野]

第29回新田次郎文学賞に輝いた名著、『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』(松本侑子著、2009年10月初版発行、光文社)。

その大作が本年5月、光文社文庫として発行されましたが、実はそのなかに、私の亡父が数ページに亘り実名で登場します。


その経緯等につきましては、 Vol.127“『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』文庫本発行! ———私事がらみですが、、、” に記させて頂いた通りですが、今回はその続編として、同書を巡る大沼芳徳さんの秀逸エッセイ『林住期の贈り物』を以下に転載させて頂きます。

これは、去る9月21日の北海道新聞(道新)夕刊コラム「プラネタリウム」に掲載されたものですが、
筆者の大沼さんは、畏友寺島実郎さんの紹介で知り合った私の心の友で、総合地域シンクタンクである(社)北海道総合研究調査会(HIT)の情報誌「しゃりばり」の編集責任者、文中の「S氏」とは、恥ずかしながら私のことです。


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              林住期の贈り物
         
                          大沼芳徳

 幼児への絵本プレゼントは、無条件の善意として歓迎される。

 大人はというと、中島みゆきは「五月の陽ざし」で、贈り物と人情のアヤが絡まるややこしさを歌っているが、どうか。

 過日、私淑するS氏から「恋の蛍」(松本侑子著・光文社文庫)を贈っていただいた。
文庫本の「あとがき」には、氏が新たな協力者として銘記されている。

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 同書は、1948年に玉川上水で太宰治と心中した女性と、その家族を描いた新田次郎文学賞受賞作品。

 読みだすと、私がいままで信じていた「教養も魅力もない女性が太宰を殺した」という心中事件の通説が、いかにデタラメなものであるかが分かる。

 俗説を覆す取材力、筆力は、単行本から文庫本化される2年間に、新たに発見された事実を加筆する誠実さに裏打ちされ、山崎富栄さん(敬称をつけずにはいられない!)を過不足なく描き出した。

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 S氏は、商社マン時代に札幌に転勤した1年間が忘れられず、定年後は好きな札幌で暮らす「林住期」(50〜75歳)謳歌の身。

 「恋の蛍」によって、記憶にほとんどない実父を知ることになる。

 山崎富栄さんと結婚した商社マン・奥名修一氏の、東京本店とマニラ支店での上司がS氏の父親だった。

 奥名氏は挙式後、ほどなくマニラへ単身赴任。そこで現地召集され翌月戦死。S氏の父親もフィリピンで戦病死。
                  
 「恋の蛍」の発光によって戦時のさまざまな人間模様が照らし出され、なおかつ、世間の曲解と誤解は半世紀を超えて払拭された。

 「林住期」に身を置く者同士の本のプレゼントもまた、良いものだ。

               (札幌・月刊誌「しゃりばり」編集)
   

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大沼さんは、ご自身では「林住期」と称しておられますが、(年令上はそうかもしれませんが)、前記の如くまだ現役第一線でご活躍中の身。


実は、そのご多忙のさなか、この文庫本用に書名・著者名の入った手作りの四方帙(しほうちつ)を仕上げられ、過日私に寄贈下さいました。

日本文化の粋を感じさせるその貴重なプレゼントには、今は『恋の蛍』と共に、道新夕刊のこの切り抜きも納まっています。

ところで、「林住期」は、五木寛之さんの同名の著書(2007年、幻冬舎)により我が国でもかなり知られるようになりましたが、
古代インドのヒンズー教社会で、男性が理想的な人生を過ごすために定められた次の四つの段階(『四住期』)の一つです。


  第一段階は、『学生(がくしょう)期』:文字通り勉強をする時代。

  第二段階は、『家長(かちょう)期』あるいは『家住(かじゅう)期』:

       結婚をし子供を育て家長としての責任を果たす時代。

  第三段階が、『林住(りんじゅう)期』:

       世俗を離れ一人林の中に移り住み、ひたすら「悟り」を求め
       「修行」する時代。

  第四段階は、『遊行(ゆぎょう)期』:

       林の中の家も捨て、究極の「解脱」に向け諸国遍歴を
       続ける時代。

    ——ただこの段階に到ることが出来たのは数百人に一人であった
      ようですーー

大沼さんのエッセイにありますように、私は札幌で5年前から、現代版「林住期」に入っています。

家から10分ほど歩きますと、シマリスや蝦夷リス、時にはキタキツネとも出会い、まさに林の中の感覚です。


これ迄の数多の悪行を懺悔(さんげ)し、それを償うべくひたすら心の純化に努め、願わくは『遊行期』にまで辿り着きたいと思う日々です。


                          (完)

2012年10月01日

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