Vol.124 この世に偶然なし(その4)——『共時性』と河合隼雄先生

[「この世」シリーズ]

“この世に偶然なし” のタイトルで、これまで三回記させて頂きました(末尾ご参照)


今回は(その4)として、私の心の師である元文化庁長官、河合隼雄先生の、そのことに関連する言葉を紹介させて頂きます。

河合先生は、スイスの精神科医・心理学者カール・グスタフ・ユング(1875〜1961)に強く惹かれ、1962年から約3年、スイスのユング研究所に留学をされていますが、そのユングが提唱したものの一つに、『シンクロニシティー(Synchronicity)』という概念があります。

シンクロニシティーは、『共時性』———意味のある偶然の一致———と訳されていますが、ユングは自分の身の回りの出来ごとのなかに、「偶然」と切り捨ててしまうには余りにも不思議なことがいくつも存在することに注目し、思索・研究を深めて行きました。

ノーベル物理学者のヴォルフガング・パウリ(1900〜1958)とは長期に亘り共同作業をしていますし、東洋文明・中国文明にも並々ならぬ関心を寄せ、鈴木大拙ともかなりの親交があったようです。


そして辿り着いたのが、

    “一見単なる「偶然」に思えるいくつかの「偶然」のなかには、
    「意味のある偶然」も存在する”

という洞察であり、それをシンクロニシティーと名付けました。

そしてそれは、一人一人の「無意識の領域」の更に奥深いところに潜んでいる、人類全体に共通する無意識ーーー『集合的無意識(Collective unconscious)』ーーーが深く関わっていると考えるに到っております。


さて、河合先生はユング心理学のわが国への導入者であり第一人者ですが、以下は『共時性』についての先生の言葉です。

『、、、、、、、とユングは考えている』と記されていますが、ご自身も全く同じか、あるいは更に深化した考えをお持ちであったことは間違いありません。
 
もちろん私もそういう考え方の信奉者の一人です。


    “人間にとって因果律に従って事象を把握することは極めて重要な
    ことであり、特にニュートン、ガリレオによる力学法則の発見以来
    すべての事象は因果的に把握し得るという確信が強まったため、
    非因果的な事象に注目することに対して強い拒否感情が生じるように
    なったと思はれる。

    それを単なる偶然として無視しないと、せっかくの体系が
    壊されるように感じられるからである。

             (中略)

    中国は古代から高度の文明をもちながら易のような共時的現象に
    注目したので、西洋近代に発達したような科学を発展させる
    ことができなかった。

    しかし実際には因果律も共時性も共に重要なものであり、
    西洋の近代は因果律思考に頼りすぎて一面的になっているので、
    それを補うことが必要であるとユングは考えている。“

                    (「宗教と科学の接点」より)


河合先生が亡くなられてからもうすぐ満5年。


ご存命であれば、【3・11】に対し、どのような発言をされたであろうか? 
興味が尽きません。 改めて合掌。


      (尚、これまでに記しました “この世に偶然なし” は
       次の通りです)

          Vol. 1 この世に偶然なし

          Vol.95 この世に偶然なし(その2)

          Vol.96 この世に偶然なし(その3)


                              (完)


2012年04月20日

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