Vol.123 『つつましさ』を再び!                      ーーー東日本大震災に思う(その10)

[その他スピリチュアル分野]

『つつましさ』———思慮深く控えめなさま・ぜいたくでないさまーーーは、私たち日本人の持つ伝統的価値の一つと言えますが、最近この言葉自体あまり耳にしなくなったような気がします。


『つつましさ』の対極にあるのは、『貪欲』———際限なく欲しがるさま———と言えますが、仏教では、『貪欲』の『貪(とん)』は、『瞋(しん)』と『痴(ち)』と共に「三毒」と呼ばれ、人間の心身の苦しみや悩みを生み出す元凶とされています。


       (この点詳しくは、Vol.54“この世の「三毒」” を
        ご覧頂ければと思います)


一方で私は、Vol.55“『煩悩』と近代社会” に記しましたように、

    『貪』を、飽くなき欲望追求心、
    『瞋』を、不撓不屈の競争心
    『痴』を、自然を畏れぬ挑戦心

と解釈してみますと、「三毒」は特に近代以降、人類に驚異的な進歩と発展をもたらしたことも事実と思っています。


欲望追求心・競争心・挑戦心は、「進歩・発展の母」とも言えますが、では私たちの欲望は、これからも際限なく充足され得るのか? 人類は未来永劫、進歩・発展を遂げられるのか? と考えますと、残念ながら否定的にならざるを得ません。


それは、「無限の欲望」は、いずれ必ず『自然』から手痛いしっぺ返しを受けると考えられるからです。
「自然は征服すべきもの」と位置づける西洋文明・一神教文明に対する「自然の復讐」と言ってもよいと思います。


そろそろ人類は、『貪欲』の方に振れ過ぎた振り子の針を、『つつましさ』の方に戻す必要があると考えています。
さもなくば『自然』は、更に大きな復讐をしてくるに違いないと案じています。

今回の大震災は、そのことを私たちに伝える貴重なメッセージと私は受け止めているところです。


さて近代は、「欲望」と「資本主義」と「科学技術」とが三位一体となって「膨張のスパイラル」を続けている時代と言えます。

そう考えますと、『自然』の復讐を避ける為には、単に「欲望」をつつましくするだけでは不十分で、「資本主義」にも「科学技術」にも『つつましさ』が求められ、その三つを一体的に「抑制のスパイラル」に押し戻す必要があることになります。

しかしそれは相当な大仕事であり、私が「新しいパラダイム」の構築が不可欠と考える所以です。


       (この点、詳しくは、

      Vol.66“「欲望」このやっかいなるものと「新しいパラダイム」"

        をご覧頂ければと思います)

しかし幸いなことに、私たち日本人は、ついこの間まで誰もが『つつましさ』を身につけており、『自然』を慈しみ畏れながら分をわきまえて暮らしていました。

熊本在住の大思想家、渡辺京二さんの次のような指摘が胸に響きます。


    “自分がある地域、ある社会階層、ある家庭に、ある身体条件を
    もって生まれつき、ある境遇、ある職業、ある運命のなかに生を
    過ごさねばならぬことを得心し、平静な心と素直な感情で
    その束の間の一生を生き通すというのは、いかなる凡人であれ
    私たちの父祖がついこのあいだまで身につけていた生のスタイル
    だった。

    彼らの有名な自己抑制はそこから生じたのである。

              (中略)

    私たちは少しばかり想い起こすだけでいいのだ。

    自然と仲間とのゆたかな交わりのうちに無名の一生が完結することに
    何の疑いももたなかったのが、ついこのあいだまでの人間の
    あたりまえの姿だったのだということを。“


         (「未踏の野を過ぎて」の中の “つつましさの喪失” より)


西洋人に較べれば、私たち日本人は振り子の針を戻すのはずっと容易な筈です。


大震災を契機に、『つつましさ』を取り戻し、その大切さを世界に発信し続けてゆくこと、それが、今回犠牲となられた二万人を超す方々への何よりの供養になると共に、放射能汚染のために住み慣れた故郷を強制的に捨てさせられる何万人もの方々へのせめてもの償いにもなると考えています。

“『つつましさ』を再び!” と願うや切です。

尚、大震災に関しての私のこれまでのエントリーは次の通りです。

    2011年3月21日

       “東北関東大震災を機縁に、「新文明」の模索を!”

    (その2)4月17日

       “「脱原発」を決断し、「電力多消費文明」との訣別を!"
     
    (その3)4月26日 “原発事故に関連しての二つの声明文ご紹介“

    (その4)6月11日 ”「科学技術」と「歴史の進歩」について“

    (その5)7月9日 

     “東北から「日本仏教=日本の心」を国中へ再び!そして世界へも“

    (その6)7月24日 

       “天外伺朗さんの描く「100年後の東北・日本」ご紹介“ 
 
      (その7)11月15日
 
    “原発問題に関する旧友からの「怒りのメール」ご紹介”

    (その8)12月11日

       “原発に関する全日本仏教会の宣言文ご紹介”

    (その9)2012年2月5日

       “日本仏教界、【3・11】を契機に覚醒!” 
                           
                           (完)     

2012年04月11日

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