Vol.106 東北関東大震災を機縁に、「新文明」の模索を!
未曾有の大災害から10日。
余震はまだ活発、福島原発の状況も全く予断を許しません。
被災された方々、関係の方々に心よりお見舞いを申し上げます。
今から25年前の1986年4月、私は三井物産モスクワ事務所長代理を命ぜられ、ロンドン支店から横滑り転勤をしましたが、着任間もない4月26日、チェルノブイリ原発事故が発生しました。
当時は旧ソ連時代であり、事故は現地では2〜3日間は一切報道されず、東京本社や欧米各店からの電話・テレックスに右往左往するばかりでした(不思議に電話・テレックスは遮断されませんでした)。
ソ連政府の正式発表後も、「本当に真実を伝えているのか?」、「放射能は実際にはモスクワにも飛んで来るんじゃないか?」、「汚染された野菜や牛乳も売られているんじゃないか?」等々、数ヶ月に亘って疑心暗鬼の大変不安な日々を送りましたが、
丁度四半世紀後に、『原子力は絶対安全』と自負する我が国で、当時と全く同じ不安な日々を送る破目になっていること、何とも複雑でやるせない思いです。
(尚、余談ですが、この1986年という年は、
「三井物産若王子マニラ支店長誘拐事件」が
発生した年でもあり、私にとっては誠に辛く
慌ただしい一年でした。
その件に関しましては、
Vol.94“『恋の蛍 山崎富栄と太宰治 』にからんで
———三井物産マニラ支店のことなど、私事ですが“
の後段部分をご参照頂きたいと思います)
さて私は、今回の大災害を、「西洋近代文明」の一つの必然的結果と捉えています。
Vol.57 「この世」と「あの世」その(3) ——“「この世」と「あの世」はひとつながり” という捉え方を再び! に記させて頂きましたように、現下の「高度科学技術文明」は、
(1)人の心の破壊
(2)地球環境の破壊
(3)核による破壊
の三つと向き合っており、破滅の危機に瀕していると考えています。
そこでは、「人間の飽くなき欲望」が、「科学技術の進歩」と「資本主義の発展」と三位一体となり、いわば強度の共依存に陥っているだけに、破滅を回避することは一筋縄ではとても行かず、「近代文明」そのものを根底から見直す必要があると考えています。
(この点詳しくは、
Vol.66 “「欲望」——このやっかいなるものと
「新しいパラダイム」“
をご一読頂ければと存じます)
今回の大事故を受け、「原発の安全性の再検証」が喫緊の課題になりますが、私は、再検証を単にそのレベルに留め置かず、
これを機縁に、「近代文明」そのものの再検証、即ち『欲望・科学技術・資本主義』の強固なトライアングル構造そのものを抜本的に見つめ直し、新しいパラダイム、「新文明」の模索・構想に着手すべきと考えています。
この大事故がわが国で起きたことにも重要な意味がある筈です。
期せずして私は、今年の年頭所感に代え、わが国の可能性について記させて頂きましたが、(Vol.103 “21世紀Second decade の始まりにあたって ——時代認識とわが国の可能性など”)、
『日本の智慧と伝統、潜在力』が、この局面で存分に発露されることを大いに期待をするものです。
(完)
2011年03月21日
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