Vol.84 ゴルバチョフ改革「三つのスローガン」——政権交代によせて
第45回衆議院選挙は、ご承知のような結果に終りました。
私は先月8日、“「総選挙公示日に思う」”と題し、政権交代を前提に私の思いを三点に絞って記させて頂きましたが、交代が現実となった今、改めて三つの思いを噛みしめています。
さて、私は三井物産勤務時代、1986〜88年のほぼ3年間モスクワに駐在しました。
当時はまだソ連であり、私の赴任前年の1985年3月、ミハイル・セルゲーヴィッチ・ゴルバチョフが54歳の若さで共産党書記長に就任し、歴史的な大改革を推進中でした。
それは、ロシア革命以降約70年に亘って続いてきた「共産党一党支配」の様々な矛盾・弊害・罪悪をオープンにし、メスを入れ、社会全体を覆っていたどうしようもない閉塞感・不公平感を打破せんとする正に革命的なものでした。
私は、ロシア人の目がどんどん輝きを増して行き、言動が自由になって行くさまを日々肌で感じていました。
(もっとも、大方のロシア人はゴルバチョフ個人に対してはある種の違和感を抱いており、『ゴルビーは西洋人』と言っていました。人々は、大酒飲みボリス・エリツィンのようなタイプのリーダーに親しみを感じていた様です)
さてゴルバチョフは、大改革を実行するにあたって、次の「三つのスローガン」を掲げ、それを徹底的に鼓舞し、推進して行きました。
1.ペレストロイカ ——社会全体の「再構築」
2.グラスノスチ ——「情報公開」
3.ノーボエ・ムイシュレーニェ ——「新思考」
なかでも三番目の「新思考」(英語では、”New way of thinking” と訳されていました)が、特に外交・防衛面で決定的な役割を果たしたことは論を待ちません。
そしてその結果、彼の書記長就任から4年後にはベルリンの壁が崩壊し、6年後にはソビエト連邦も崩壊してしまいました。
師と仰ぐ梅原猛先生は、
“時代閉塞の状況を破ろうとする歴史は、
しばしばその理念が肉体に具現した英雄を生み出す“
と記しておられますが(『自然と人生 思うままに』)、ゴルバチョフは、その意味で間違いなく英雄と言えましょう。
(尚、梅原先生は上記書のなかで「リーダーの
7つの条件」を提示しておられます。
詳しくは、Vol.76 “リーダーの7つの条件”を
ご覧下さい)
さて話しはわが国の政権交代に戻りますが、私のなかでは今の日本と二十数年前のソ連とがかなり色濃く重なり合います。
——50年以上続いた「自民党一党支配」と、
約70年続いた「共産党一党支配」
——一流の民主主義国を自負しながら、例えば「核密約」など、重大
事実が隠蔽されている国と、
殆ど全ての情報を隠蔽していた共産国家
——両国共に、巨大な「中央集権型官僚主導システム」が制度疲労を
起こし、社会は硬直化し停滞、国民の不満は頂点に
——そんな局面に登場した『宇宙人』と呼ばれる鳩山新首相と、
『西洋人』と呼ばれていたゴルバチョフ、、、、、、
この際私たちは、わが国の現状は二十数年前のソ連と大同小異のレベルということを先ず謙虚に認めるべきと思っています。
(もっとも当時のソ連にはホームレスは一人もおらず、治安も極めて安定しており、その点ではソ連の方がまだましであったとも言えますが)
そんなわが国を再生させる為には、新政権は、ゴルバチョフ改革に勝るとも劣らぬ革命的な大仕事に着手する必要がありますが、それに当たっては、彼の「三つのスローガン」は大いに参考になるものと考えています。
そこで以下、「三つのスローガン」に則って、新政権への政策課題・要望などを記させて頂きます。
1.「再構築」 ——絆を無くした社会・壊れた地方・壊れた自然・
壊れた人の心、の再構築が急務です。
新首相の『友愛』は、「再構築」のよりどころと
して最適と考えています。
2.「情報公開」——霞ヶ関周辺には「核密約」以外にも、まだまだ
多くの隠蔽がある筈です。
必要あれば強権を用いてでも、徹底的な「情報
公開」を求めたいと思います。
その為には、各省庁の「記者クラブ」の抜本
改革と「内部告発の奨励」が効果的と考えて
います。
3.「新思考」 ——新政権には、政治・経済はじめあらゆる分野で、
旧来の枠組み・固定観念を離れ、全てゼロ
ベースで縦横無尽に「新思考」を展開し実践す
ることが望まれます。
環境問題しかり外交問題しかりです。
オバマ大統領の『核兵器なき世界』も、
「新思考」に基づくものと言えます。
世界潮流を鋭く感知し伸びやかに思考することが
今最も必要と思っています。
政権交代を心より歓迎し、鳩山新首相のリーダーシップに期待するや切です。
がしかし、「鳩山改革」が成功するか否かは、ひとえに私たち有権者の見識次第と考えています。
(尚、余談ながら、新首相は、国会議員一年生であった1988
年秋、「自民党訪ソ議員団」のメンバーとしてモスクワに
来られました。
私は同じくメンバーであった旧知の斉藤文夫(元)参議院議員の
紹介により、その時初めて新首相にお会いしました。
あれから21年、感慨ひとしおの今日この頃です)
(完)
2009年09月05日
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