Vol.82 「再考の府」の再興を望む! —「臓器移植法改正案」成立に思う

[その他政治・社会分野]

「【脳死】は人の死」には、いまだ社会的合意無し! ——「再考の府」における徹底的な審議を望むーー” との私の切なる願いも空しく、先週7月13日、「【脳死】は人の死」を前提とする「臓器移植法改正案」(いわゆるA案)が参議院で可決・成立しました。


参議院厚生労働委員会では、柳田邦男さんの核心に触れる陳述を筆頭に、各参考人から種々の意見が出され、幅広い角度から真摯に「再考」が進行していましたが、都議選結果に起因する政局急展開のあおりを受け、「人の生死」に関わる超重要法案が慌ただしく本会議での採決に付されてしまいました。

残念至極です。

参議院では、衆議院より送られてきたA案に対し、野党議員より「子ども脳死臨調設置法案」(いわゆるE案)が提出され、更に審議後半、「【脳死】は人の死ではない」と考える自民党議員より修正A案が提出されました。


採決は先ず修正A案に対し行われ、賛成72票、反対135票で否決廃案、次いでA案の採決に入りましたが、ここで目を疑う事態が発生しました。

というのは、「【脳死】は人の死ではない」と考える72名の修正A案賛成者のうち、なんと55名の議員(うち与党議員45名)が、「【脳死】は人の死」とするA案に賛成票を投じたのです。

その結果A案は、賛成138票、反対・棄権・欠席103名となり、可決・成立に到った次第です。


仮に、A案が先に採決されていれば、賛成83票(138マイナス55)で廃案となっていただけに、何とも納得のいかない極めて後味の悪い結果となりました。


このあたりに関し、東京財団の大沼瑞穂研究員は、次のように記しておられますが、全く同感です。
   
    “「脳死を人の死と考えるには、社会的合意ができていない」と
     考える人が、修正A案が廃案になったからといってA案を
     支持するのは、支離滅裂としかいいようがない。
     審議で平行線をたどったように、「脳死は人の死」とするか否か
     がA案と修正A案の大きな違いであり、この考え方の違いは
     決定的なものであったにも関わらず、最初から「改正ありき」
     で、修正A案が廃案ならA案でも良しとする安易な投票行動
     だったからだ。         (中略)

     臓器移植法が改正されるプロセスは、残念ながら、極めて雑で
     あったとしか言えない。  (中略)

     「子ども脳死臨調設置法案」は、野党案として提出されたが、
     与党の誰ひとりも賛同者とならなかった。
     党議拘束が外されていたにもかかわらず、死生観が政局に
     優先されてしまったと言わざるを得ない。“

        (尚、大沼論考全文は、“臓器移植法改正案を巡る議論 
           〜議員立法のあり方を問う〜”
をご参照下さい)


さて、冒頭に記しました私の願いの末尾に記しましたように、衆議院における政党別のA案賛成者比率は次の通りでした。

       自民党       :    約6割
       公明党       :    約4割 
       民主党       :    約4割
       共産、社民、国民新 :     皆無

これに対し、上記の経緯を辿った参議院におけるA案賛成者比率は次の通りです。

       自民党       :    約8割
       公明党       :    約7割
       [民主・新緑・国民新・日本]会派 
                 :    約4割
       共産、社民    :      皆無

     (衆参両院とも、共産党を除く各党は「党議拘束」無し)


衆議院における採決時には、A案提出者から正確性を欠く説明文書が配られ、露骨な多数派工作が行われたことは、参議院審議中に公けになりましたが、上記の経緯・結果から見る限り、参議院自民党内では、A案成立に向け、有形無形のプレッシャーがあり、実質的には「党議拘束」がかけられていた状態と想像されます。

「再考の府」、「良識の府」いずこ? との思いを禁じ得ません。


私は、約1年前のこの場に、“国会から政党を無くし、議員を全員無所属に! ——政治の中長期的活性化に向け、「無政党制民主主義」の導入検討を望む”と題する私見をアップ致しました。

それは今後1〜2世紀を見据えた問題提起でありましたが、今回の参議院審議を目の当たりにするにつけ、「再考の府」の再興に向け、先ずは参議院だけを一日も早く「無政党制」にすべきと考える次第です。

                            (完)

2009年07月20日

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