自民党と民主党(その6) ーー解散総選挙を前にして思うこと
[佐藤尊徳]
ある自民党議員がため息とともにつぶやいた「自民党もうだめですね」と。
記者はその前からもうとっくに賞味期限切れだと主張していたが。
しかしよくもここまで落ちぶれたか、と言わざるを得ないほどの凋落ぶりを
「発揮」している自民党。
鳩山総務大臣の更迭により、内閣支持率は大きく下げた。
これは、郵政民営化の是非よりも、優柔不断でなかなか決断が出来なかった
麻生総理への不信任だ。
これで自民党は益々浮き足立った。
小沢氏秘書の不正献金問題と、景気回復期待で勝てるかもしれないという淡い期待が打ち砕かれ、思考停止に陥ったとしか思えない行動の数々が噴出した。
6月23日、白昼堂々とマスコミを引きつれ、古賀誠自民党選対委員長が宮崎県庁を訪れた。
東国原知事への次期総選挙への出馬要請だ。
「次期総裁候補なら」と、信じられない発言を引き出し、すごすごと古賀氏は宮崎をあとにした。
出馬要請をうまく断るための方便だと言う人もいるが、自民党から出馬の密約もあると噂される東国原氏は、後々のことを考え本気で言ったと思われる。
それに何の反論もせず、その後もやれ総務大臣だ、比例一位だと検討してきた自民党も情けない。
威勢良く啖呵を気って、交渉を打ち切ればまだ古賀氏も踏みとどまれた。
自身の選挙まで危うくなると、ここまで落ちてしまうのであろう。
それに、古賀氏も東国原氏も宮崎県民に対して失礼だ。
県の改革にさしたる進捗もみられず、次期県知事選では、強力な対抗馬の動きも
みられてきた東国原知事が、焦りの色を見せているという情報もあるが、彼の側近から漏れてくるのは、今回は最初から出馬するつもりはあまりなかったということだ。
しかし、今回の騒動で東国原氏への支持が落ちたことだけは間違いないだろう。
また、血迷った古賀氏の政治生命も絶たれた。
そこまで人気が欲しければ、スマップの木村拓也氏にでも出馬要請をしたらよろしい。
麻生総理周辺から聞こえてくる話は、総理はさすがに精神的にかなり参っていて、判断力を失っているということだ。
記者から言わせれば、もともと判断力も決断力もなかったから、解散も打てずにここまで右往左往しているのだろう。
側近がどんどんいなくなってしまったので、直前に会った人の話しをそのまま聞いてしまうらしい。
初めから主義主張など持ち合わせていない人間なので、それも仕方なかろう。
安倍元総理に諭されて手をつけようとした党役員人事も、清和会の実質的オーナー・森喜朗元総理に反対されるとあっさりと手のひらを返してしまった。
このぶれ方をみた有権者は益々離れて行くに違いない。
支持率が一桁に落ちた元首相や、政権を放り投げた元首相が跋扈している日本の
政治の在り方が問われている。
さて、一方の民主党といえばこれまたさえない。
敵失に乗じて、おそらく政権交代は実現するだろうが、自分達の実力ではないことを十分に理解していない。
浮かれて政権党になったあとのポストの話まで出る始末だ。
自分達が掲げたマニフェストの検証や、財源の手当てなどを心配するべきなのに、まずは政権をとることだけしか考えていない。
鳩山党首と、岡田幹事長の間でも、郵政・西川問題や、消費税、高速道路無料化、などなど、不一致の意見が続々出てくるようでは、有権者も信頼が置けない。
鳩山党首の個人献金問題(故人などの架空の人物が献金)は明らかに違法であるが、税制上も何のメリットもなく、何故あのような個人献金をしたのかもよくわからない。
説明では個人献金が多いように繕う為だと言うが、識者の間では、あまりに幼稚だとの声がしきりだ。
このような人が次の総理大臣というのもなんとも不幸な話だ。
民主党が政権をとれば、参議院での過半数維持のために国民新党や社民党との連携を続けなければならない。
社民党とは安全保障上の問題で相容れないところがあるし、国民新党は古い自民党のイメージが付きまとって消えない。
渡辺新党や平沼新党もイニシアティブを握ろうと出てくるだろう。
また、政権与党であり続けたい公明党・創価学会の動きも要注意だ。
総選挙後に一波乱も二波乱もありそうだ。
いずれにしろ、永田町のコップの中の争いだけで、置き去りにされた日本国民だけが不幸だ。
ここはきっちりと、候補者の人物とマニフェストを吟味して投票行動に移したい。
佐藤尊徳 (「経済界」編集長)
2009年07月03日
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