Vol.70 日弁連の終身刑創設反対意見に異議あり!《一仏教家の想い》

[死刑制度関連]

日本弁護士連合会(「日弁連」)は先月18日、「量刑制度を考える超党派の会」(「量刑議連」、会長加藤紘一衆議院議員)が、終身刑創設に向け議員立法の形で準備中の改正法律案に対し、反対意見を公表しました。

(意見書全文はこちらPDF 54KB “「量刑制度を考える超党派の会の刑法等の一部を改正する法律案(終身刑導入関係)」に対する意見書”)

私は、Vol.58 “超党派議連「量刑制度を考える会」(仮称)に期待!”に記しましたように、本年5月末に正式発足したこの議連に大いに期待をしており、改正法律案の一日も早い上程・成立(終身刑の創設)を切望するものですが、今回、わが国における死刑廃止推進組織の大きな柱である日弁連が、3ヶ月以上に及ぶ集中議論の末、終身刑創設に反対する結論に到達したことに強い失望を禁じ得ません。


以下、日弁連意見書と対比させる形で、私見等を記させて頂きます。


(1) 日弁連の結論は、

      “無期刑受刑者を含めた仮釈放のあり方を見直し
      無期刑の事実上の終身刑化をなくし、かつ
      死刑の存廃について検討することなしに、
      刑罰として新たに終身刑を創設することには反対する“

   というものですが、私は次のように反論したいと思います。

      “終身刑を創設することによって、無期受刑者を含めた
      仮釈放のあり方が見直され、無期刑の事実上の終身刑化
      が無くなり、かつ死刑の存廃についての検討も進む“


(2) 量刑議連は、「死刑廃止を推進する議員連盟」(「死刑廃止
   議連」、会長亀井静香衆議院議員)の方々と、死刑存置論者
   の方々の両方によって成り立っていますが、終身刑創設の
   立法理由は、両者一致して次の通りです。

      “死刑と、最短10年で仮釈放が認められる無期刑との間には、
      法律上大きなギャップが存在している。
      そのギャップを埋めるために終身刑の創設が必要。“

   これに対し日弁連は、

      “昨今の厳罰化の流れの中で、無期刑が終身刑化しており、
      死刑と無期刑との間には事実上大きなギャップはなく、
      終身刑を創設しなければならない立法事実は存在しない。“

   という見解です。

   この点、私は以下のように考えています。

      “死刑と無期刑との間に存在している大きなギャップは、
      現状「運用」によって埋められ、無期刑が終身刑化している。
      しかし、ギャップは、「運用」によって埋められるべき
      では無く、
      「法律」によって埋められるべき。“


(3) 率直なところ、今回の日弁連意見書からは、【国家による殺人
   行為】である死刑は、終身刑を含むその他の刑とは本質的に全く
   異なる、許されざる刑であるという思いを感じ取ることが出来
   ません。
   いわんや、死刑と終身刑とを、ある意味で同じと捉えるような
   見方には強い違和感を覚えます。

   
   以下は、意見書17ページの記述です。

      “終身刑を創設して死刑判決を1件減らすために、従来なら
      無期刑判決が受けられた者の相当数を終身刑にすることは
      許されないのではないか。

      死刑とは、生物学的な意味でのものだけでなく、社会的な
      意味でも存在しており、それが終身刑である。“

   
    上記に対し、私は次のように訴えたいと思います。

      “終身刑の創設によって死刑判決を1件でも減らせるならば、
      仮に従来なら無期刑判決が受けられた者の相当数が
      終身刑になったとしても、無期刑が終身刑化している現状下、
      実質的に大きな差は無く、許されるのではないか。

      死刑とは【国家が人を殺す】ことであり、殺人犯が
      【生涯かけて罪を償う】終身刑とは全く次元が異なる刑
      である。“


(4) また、死刑と終身刑の併存という問題に関し、意見書7ページに
   以下の記述があります。

      “そもそも、終身刑を含む死刑に代わる最高刑のあり方に
      ついては、死刑執行を停止した上で検討するというのが、
      『これまでの当連合会の考え方』であることからすれば、
      死刑執行の停止のないままでの終身刑導入には消極的に
      ならざるを得ない。“

   たしかに終身刑の創設は、日弁連のみならず、死刑廃止議連の
   「死刑廃止法案パッケージ」においても、死刑執行停止と
   セットになっており、それが本筋であることは論を待ちません。

   しかし、現下のわが国の世論動向などからすれば、死刑執行停止
   法案が近い将来成立する可能性は皆無と思わざるを得ません。

   死刑廃止議連はそこを踏まえ、次善策として、先ずは終身刑の創設
   に舵を切ったものと考えられますので、日弁連も徒に『これまでの
   当連合会の考え方』に固執することなく、発想を変え柔軟に対応願い
   たいと思う次第です。


(5) 一方、日弁連のなかにも、

     “終身刑が創設されれば、これまでは死刑判決しかあり得な
      かった者の中に終身刑判決がなされるものが増え、結果
      として死刑判決が減少するとして、終身刑の導入に賛成と
      する意見も存在する。

     そこには、激増する死刑判決を1件でも多く減らしたいという
     悲壮なまでの切実な思いがある。“

   とのことです。

   私はそこに、世界最大の人権団体とも言える日弁連の真髄を見る
   思いで、大いに勇気づけられました。

   そういう意見の方々が、今回の結論に怯むことなく、引き続き
   積極的に発信を続けられることを切望致します。

「死刑廃止」が間違いなく世界の潮流であるなか、わが国では死刑の存置を望む意見が圧倒的多数ですが、その一因は、現在は上記のように、死刑と無期刑との間に法律上大きなギャップがある為という有力な見方があります。

(直近の内閣府世論調査結果は、Vol.17 “死刑を永久に存置しますか? 世界の潮流に逆らって・・・”をご参照下さい)、


一日も早く終身刑を創設することによって、死刑判決を1件でも多く減らしながら、ギャップのない新しい刑罰体系の下で、また、裁判員裁判も通じて、人々が死刑について改めて真剣に考え、世論が世界潮流に近づいて行くことを切望するものです。


仏教の最初の戒めは、【殺すなかれ】です(カテゴリー[その他仏教関連]のなかの、Vol.16 ”「不殺生戒」を今あらためて” ご参照)。


『「命」は尊い。生きとし生けるもの全ての「命」は尊い。たとえ凶悪犯であっても、やはり「命」は尊い。「命」は決して奪ってはならない。「命」あるものを決して殺してはならない。』という考え方を徹底的に押し広めて行くことこそが、世の中から殺人事件を無くし、ひいては、世界中から戦争を無くする最も効果的な道筋だと信じています。

                            (完)

2008年12月16日

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