Vol.66「欲望」—ーこのやっかいなるものと、「新しいパラダイム」

[その他スピリチュアル分野]

近代以降の大きな特徴の一つは、人間が宗教の束縛から解放されて自由になり、のびのびと奔放に、己の「欲望」を追求出来るようになったことと言えます。

ニュートン(英 1642~1727)と共に、西欧近代化の生みの親とされるデカルト(仏1596~1650)は、人間の「欲望」は、「宗教」に依らずとも「理性」によってコントロール出来ると考えました。

また、カント(独 1724~1804)は、「欲望」を「道徳」によってコントロールせんとしました。

爾来3〜4世紀、果たして人間の「欲望」は、「理性」や「道徳」によって的確にコントロールされているでしょうか?

残念ながら、「ノン!」と言わざるを得ません。

「欲望のコントロール」にとって不幸であったのは、この間に、同じデカルトが提唱した「還元主義」という手法を土台として、「科学技術」が飛躍的に進歩したこと、並びに、「資本主義経済システム」が大きな発展を遂げたこと、と私は捉えています。


     (デカルトの還元主義に関しましては、Vol.57 "「この世」と
     「あの世」その(3)”
 をご参照下さい)


宗教の束縛から解き放たれた人間の「欲望」と、「科学技術の進歩」、「資本主義の発展」の三つが、相互に影響しあいながら、スパイラル状に加速拡大している、
ーーーそれが現代という時代と私は定義づけていますが、以下はその悪しきスパイラルの代表例です。

(1)『戦争に負けたくない、絶対に勝ちたい』という正に必死の欲望が、
    核兵器を生み出し、それが世界に拡散を続けていること。

   キーワード : 【無差別殺戮】、【産軍共同体】、
           【宇宙にまで伸びる軍拡競争】

(2)『もっと便利な物が欲しい、もっと豊かになりたい』という飽くなき
   欲望が、大量生産・大量消費社会を作り出し、その結果、地球上の
   資源は枯渇に瀕し、自然が大きく壊されてしまったこと。

   キーワード : 【物質文明】、【拝金主義】、【環境破壊】

(3)『一日でも長生きしたい、何とかして子供が欲しい』という本能的
   欲望が、「脳死臓器移植」や「人工生殖」など、自然の摂理に背く
   高度医療技術を生み出し、日々進化を続けていること。

   キーワード : 【医の商業化】、【平均寿命の急速な延び】、
           【凍結精子・凍結卵子・クローン人間】


上記三つの「欲望」そのものは、長い人間の歴史を通じ常に存在していた訳ですが、それらがもたらした結果は、キーワードからも明らかな如く、近代以降全く様変わりしたと言えます。

このまま進むと、いったいどうなってしまうのか? 
私たちはいったいどこへ辿り着くのか?


以下は、宇宙物理学者松井孝典先生の予言です。


    “人間が欲望を持つかぎり、制御できない欲望はさらなる効率化を
    生み、いつまでも拡大を追い続ける。

    拡大しすぎたところで、地球システムからモノやエネルギーの
    負のフィードバックをうけ、一気に崩壊する。
    たとえば、水不足により人間圏への水の流入が制御されて人間圏の
    拡大が抑えられ、負のフィードバックがききはじめようとして
    いる。
    
    現代文明は、イナゴの大発生のように、餌が無くなれば全滅する
    短命型の文明といえる。“

                     (「地球大異変」より)

松井先生の予言が現実化する前に、何とかして再び人間の欲望をコントロールする必要がありますが、ひとたび【自由】という【禁断の木の実】を味わってしまった現代人は、もはや昔ながらの宗教の下には戻れないような気がしています。

従って、今必要なことは、「欲望」と「科学技術」と「資本主義システム」の三つを一体的に捉え、一つの傘の下で、特に『科学技術の暴走』と『営利追求一辺倒の経済システム』とを有効にコントロールしつつ、宇宙全体の調和を求めて行く、、、、、、、そんな「新しいパラダイム」を構想、構築することであると考えています。

「新しいパラダイム」のキーワードは、前述現代のキーワードとは対照的に、
【平和】、【非武装】、【心の豊かさ】、【共生】、【医は仁術】、【生命の尊厳】といったものになると思っています。

がしかし、それらは平安時代の、あるいは江戸時代のキーワードであると言っても通用することに気づく時、近代以降の罪の大きさに愕然とし、深く考えさせられます。


       (この点、Vol.7 “近代合理主義の功と罪” も併せ
        ご参照下さい)


さて、「新しいパラダイム」ですが、私は、それを一神教文明のなかに求めるのは無理であり、鍵は、東洋なかんずく我が国の智慧と伝統のなかに存在しているように感じています。


この点、畏敬する梅原猛先生や、内山興正禅師の次のような考え方に強い共感を覚え、大いに励まされます。


     “自然とのかかわりのなかで生きた人間が、自然の環境を離れて
     一種の合理主義をつくりあげた。
     その合理主義が今パンクしかけている。
     もう一度その合理主義を自然のなかに戻さなければいけない。
     人間が自然のなかにどういう位置を占めているのかという、
     はっきりしたプリンシプルを立てて、そこへ戻さなくちゃ
     いけない。
     それが現代の思想的課題だと思います。
     日本の伝統は、その課題を果たすうえで役立つ可能性をもって
     いると私は考えているんです。“

            梅原猛 (「梅原猛 九つの対話」のなかの
                   清水博博士との対話より)

     ”今の日本のみが、
     時間的つながりとしては、過去の東洋文明の粋たる仏法を蓄積・
     保存し、空間的つながりとしては、現代の西洋文明中に
     住まっており、その交点として、過去の仏法を現代文明のなかに
     甦らせることのできる唯一の国です“

               内山興正禅師(1912〜1998)
                         (「求道」より)

「新しいパラダイム」の構築に向け、今こそ私たちは、いろいろなレベル・ルートで、『和の思想・和の文化』を、自信を持って世界に発信して行くべきと考えています。


同時に、『平成の聖徳太子!』と呼びたくなるような、やさしさと先見性と哲学とを兼ね備えた人物が、遠からず我が国のトップリーダーになり、我が国のみならず全世界を破滅から救ってくれることを夢見ています。
                             (完)

2008年10月06日

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