Vol.65 保岡法務大臣あて「死刑廃止キリスト者連絡会」の要請文を受けて

[死刑制度関連]

カトリックもプロテスタントも含む超教派のキリスト者グループである「死刑廃止キリスト者連絡会(廃キ連)」は、去る8月30日、保岡法務大臣あてに後記の要請文を送りました。

保岡大臣は、去る8月1日発足の第2次福田内閣で、8年ぶりに2度目の法務大臣に就任した方ですが、翌日の会見で、「終身刑の創設には反対」として、次のような理由をあげた、私に言わせればかなり特異な大臣です。

(尚、「終身刑創設問題」に関しては、Vol.58 “超党派議連「量刑制度を考える会」(仮称)に期待!”をご参照下さい)

    
     ” 日本は恥の文化を基礎とし、潔く死をもって償うことを
      多くの国民が支持している。
      終身刑は残酷で、日本の文化になじまない “


保岡大臣は死刑存置論者ですから、彼は言外に、“死刑は残酷ではなく、日本の文化になじんでいる” と言っていることになりますが、法務大臣の立場でのこういった発言・考え方は、いかにも不適切で、世界各国に大きな誤解を与えかねないと深く憂慮を致します。

「廃キ連」の今回の要請文は、そうした保岡大臣に対する強い危機感から出されたものと想像をしていますが、特に「日本の伝統」についての記述は極めて当を得ており、私はキリスト者ではないものの、要請文の中身に強い共感を覚え、全面的に賛同をするものです。

幸いにも福田総理の突然の辞任により、保岡大臣の在任は一ヶ月で終りましたが、次期以降の法務大臣は、かっての杉浦正健大臣のような、死刑廃止論者の方の就任を強く望むものです。

以下が「廃キ連」の要請文全文です。

            ———————————————

法務大臣・保岡興治殿

    法務大臣への御就任、御苦労様です。

    私たちは、人間の尊厳と基本的人権の確立を願い、死刑制度の
    廃止を求めるキリスト者として、法務省が死刑廃止のために
    執行を停止することを要請いたします。

    死刑制度を是認する意見として、被害者遺族の加害者に対する
   「復讐権」の尊重を挙げる人がありますが、「復讐権」などと
   いう権利は民主主義社会を形成する基本的人権のリストの中には
   存在していません。
   今の日本で殺人者のうち死刑判決を受ける人は1%程度ですから、
   被害者の99%は「復讐権」を侵害されていることになります。

   刑罰は、犯罪者の反省と更生のための教育刑であって応報刑では
   ない筈です。

   死刑制度は犯罪抑止効果があるから死刑は治安維持のために必要
   であるという意見がありますが、1989年に国連は「死刑の
   抑止効果を検証しようとする研究では、死刑が終身刑より大きな
   犯罪抑止力になるとの科学的証明はできなかった」との結論を
   発表しています。  
 
   1998年の欧州評議会人権委員会も同様な報告をしています。

   日本では今年の6月、2か月ごとの連続死刑執行のさ中に
   「秋葉原通り魔事件」が起き、また、死刑にされたいから殺人を
   したというケースがときどき起き、死刑が犯罪抑止力をもたない
   ばかりか、犯罪の動機にさえなっています。

   「日本には死んでお詫びをするという伝統がある」という意見が
   ありますが、平安時代に仏教の影響で300年も死刑執行が
   なかったことに注目したいと思います。

   何でも自分の主張を「日本の伝統」として正当化することは恣意的
   であっ危険です。

   死によって清算される、という考えは、処刑によって過去を忘却し
   過去を不問に付する精神的態度であって、それは、犯罪者の責任を
   犯罪者自身に問いかけて悔い改めを求めることや、犯罪の社会的原因
   の解明と解決のための長期的な努力を怠らせています。
   そのような日本の悪弊を除去することこそが求められていると
   私たちは考えます。

   世界の70%の国が死刑を廃止または10年以上停止している中で、
   日本政府が死刑という残虐で野蛮な、基本的人権を破壊する刑罰を
   存置している現状を反省し、現状を改めるために御尽力下さい。
 
       2008年8月30日   死刑廃止キリスト者連絡会 

                             (完)

2008年09月06日

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