Vol.64「生殖補助医療」に関する日本学術会議金澤会長の談話——日本人男性の依頼によるインド人女性の代理出産事例を受けて

[その他生命倫理関連]

「生殖補助医療」に関する法整備の動きが全く見られぬなか、新たな代理出産の事例が表面化しました。

報道によれば、40代の独身日本人男性の依頼により、匿名の第三者の卵子を使って、インド人女性が現地で女児を代理出産したとのことです(男性は代理出産の依頼後、日本人女性と結婚せるも、女児出産の前に離婚)


しかし、インドと日本両国の法律が障壁となり、女児はインドを出国し日本に入国することが出来ず、一方、実際に女児を出産したインド人女性は、商業目的の代理出産契約は履行済みとして女児に付き添っていないため、現在は、依頼した男性の母親がわざわざインドまで出向いて女児の面倒を見ている由です。 

【自己決定権】、【幸福追求権】が、大手を振ってまかり通る昨今の世の中とはいえ、この事例は明らかに、【自然の摂理】に背き、【生命の尊厳】をもてあそぶ行為であると私は考えていますが、ともあれ、既に生まれてしまった女児が、社会的不利益を被ることが絶対無いよう、両国政府の迅速な人道的対応を切望するものです。

さて、Vol..62 “「生殖補助医療」に関する早期法整備を望む(その4)——内閣府・厚生労働省の怠慢・無責任を糾弾するーー”のなかで述べましたように、日本学術会議は、去る4月16日、「生殖補助医療をめぐる諸問題に関する提言」を、法務・厚生労働両大臣に提出致しました。

しかし、提言は既に4ヶ月も店ざらしにされたままで、一向に日の目を見る気配がありません。


そうした状況下、日本学術会議はこの程、インドにおける今回の事例を引きながら、「生殖補助医療」に関する課題についての金澤会長談話を発表致しました。

私はこれを、「動かぬ政府」に対する学術会議の「苛立ち」、「悲痛な叫び」と受け止めていますが、書かれている内容には強い共感を覚えます。

そこで以下に談話全文を転載し、「生殖補助医療」に関する早期法整備に向け、政府の一刻も早い具体的行動を今一度改めて強く要望致します。


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     代理懐胎を中心とする生殖補助医療に関する課題に
     ついての会長談話
   (—海外における日本人の依頼による代理出産の事例に関連してー)


日本学術会議は、代理懐胎を中心とする生殖補助医療をめぐる諸問題について、法務大臣と厚生労働大臣からの審議依頼(平成18年11月)に基づき、法学、医学、生命倫理等の専門家からなる委員会を設けて1年以上かけて検討を進め、本年(平成20年)4月に、同審議依頼に対する両大臣への回答及び「代理懐胎を中心とする生殖補助医療の課題—社会的合意に向けてー(日本学術会議 生殖補助医療の在り方検討委員会)」と題する対外報告をとりまとめました。

 対外報告「代理懐胎を中心とする生殖補助医療の課題—社会的合意に向けてー」
 (平成20年4月8日 日本学術会議 生殖補助医療の在り方検討委員会)
 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t56-1.pdf


今般、海外における日本人の依頼による代理出産に関する報道がなされております。

日本学術会議は個別の問題についてのコメントを差し控えますが、ここで発生した事例は、上記対外報告で指摘した代理懐胎に関する諸問題及びそれらに対する提言の内容と直接関連しているものと考えます。

言うまでもなく、最優先されるべきは子供たちの福祉であり、その点から懸念されるのは、報道された子供だけでなく、報道されていない事例で生まれてくる子供たちのことです。


日本学術会議としては、生殖補助医療に関する課題について、それが個人の生命倫理観や家族観等にかかわる深淵かつ難しい問題であることを十分理解しつつも、改めて本年4月にとりまとめた対外報告における提言を参考としていただき、国民の間で幅広く議論が行われ、早期に社会的な合意がなされ、法制面での整備を含め、国を挙げて問題解決に向けて動き出すことを期待します。

                        平成20年8月15日
                        日本学術会議会長
                          金 澤 一 郎

                                 以上

2008年08月17日

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