Vol.50 国連委員会に於ける『死刑執行停止決議案』の採択に思う    ーー死刑廃止に向け今こそ政治のリーダーシップを!!

[死刑制度関連]

人権問題を扱う国連総会第3委員会は、去る11月15日、2日間の白熱した討議をて,『死刑執行停止決議案(Resolution calling for Moratorium on the use of the death penalty)を採択しました。

採択された決議案の主要点は次の通りです。


(1) 死刑制度の継続に深刻な懸念を表明

(2) 死刑存置国に下記を要請

  ・ 死刑囚に対する国際的な人権保護基準の尊重
  ・ 死刑の執行状況、死刑囚の人権保護状況を国連事務総長に報告
  ・ 死刑の執行及び死刑の適用対象罪を段階的に削減
  ・ 死刑制度廃止を視野に入れた執行の一時停止(モラトリアム)の導入

(3) 死刑廃止国には制度を再導入しないよう要請。

この決議案は12月の総会本会議に付議される見込みですが、残念ながら本会議で正式に決議されても法的拘束力はありません。
しかし、決議が大きな契機となって、死刑制度を巡る議論が世界中で改めて一段と高まり、我が国でもこの問題が現実的な政治課題として急進展することを大いに期待するものです。

同様の決議案は、1994年に同じ委員会に提出されたものの小差で否決、1999年の提出時には決議案に反対する国々の修正要求が通ったため委員会採決を断念、という経緯があるだけに、今回決議案が委員会で採択され、本会議に上程される運びとなったことは極めて意義深く、「死刑廃止」が間違いなく“世界の潮流”であることが証明されました。

死刑制度に関しての“世界の潮流”と、我が国の世論の推移に付きましては、このコラムVol.17 “死刑を永久に存置しますか? 世界の潮流に逆らって、、、”でやや詳しく記させて頂きましたので、ご参照頂きたいと思いますが、
その時点(2005年3月)では、世界196ヵ国中、廃止国118ヵ国、存置国78ヵ国であったものが、現在は世界197ヵ国中、廃止国133ヵ国、存置国64ヵ国になっており、“世界潮流”は着実に具現しつつあります。

さて、上記第3委員会に於ける採決は、賛成99ヵ国、反対52ヵ国、棄権33ヵ国でしたが、先進国で反対に回ったのは米国と日本の2ヵ国みです(詳細は、11月15日付け国連プレスリリースGA/SHC/3906 の最下段ANNEX IXご参照)

日本の反対理由は、上記リリースの真ん中より少し下に記載されていますが、要は、
   (1)各国の刑事諸課題(「司法権」)が優先されるべきであり
   (2)日本では「最も悪質な犯罪者には死刑が相当」というのが
      世論の大勢である 
というものです。

一見もっともらしい反対理由ですが、私は次のように考えています。

(1) 死刑問題は最大の人権問題であり、「人権のグローバル化」が進行
   するなか、ことこの問題に関する限り、「各国の司法権が優先される
   べき」という考えは、国際的にはもはや説得力を失いつつあると
   見られること。

(2) 上記Vol.17 に記しましたように、たしかに世論調査では死刑
   存置派が今や8割を超しています。
   しかし、そもそも死刑のような究極の人権問題を、“世界潮流”と
   逆行する国内世論に委ねたままにしておくことは大いに問題と
   考えています。

   加えて、世論調査結果は質問の立て方と大いに関係しており
  (国勢調査の「調査票」ご参照)、もし「仮釈放の無い終身刑」が新設
   された場合には、どう考えるか?に関する世論は全く調査されて
   おりません。

   従って、「最も悪質な犯罪者には死刑が相当」が世論の大勢と断定
   するのはいささか早計に過ぎると考えます。

国会では、既に「死刑廃止を推進する議員連盟」(死刑廃止議連、会長亀井静香国民新党代表代行)が、終身刑の新設・『死刑臨調』の設置・死刑執行停止法の制定を三本柱とする「死刑廃止法案パッケージ」を策定済みです。

また、日本弁護士連合会(日弁連)は、去る2004年10月、"死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の公開及び死刑問題に関する調査会の設置を求める決議” を世に問うています。

この問題を国会で審議するための土台・環境は、とうに十分整っていると言えます。

Vol.37 “「美しい国」なら死刑の廃止を”のなかで触れましたように、フランスでは1981年、時のミッテラン大統領が60%を超す世論の反対にも拘わらず死刑廃止を決断しました。
今こそ政治は、『世論が、、、、、、』などという逃げ口上や、『死刑廃止問題は票にならない』などという低次元の思考から脱却し、“世界潮流”をしっかり見据え、死刑廃止に向け確固たるリーダーシップを発揮すべき時と考えます。

また、国連決議を一つの契機に、この問題に対するメディアの的確な問題意識と対応も強く要請したいと思います。             
                            (完)

                              

2007年11月29日

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