Vol.44「テロ特措法」延長問題に思うーー事実関係の整理と対応私案ーー

[その他政治・社会分野]

11月1日に期限切れとなる「テロ特措法」(平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法)の延長問題が秋の臨時国会の最大の政治課題になることは間違いないと考えています。

そしてこの問題は、展開いかんによっては、政界大再編のきっかけとなる可能性を秘めていると感じています。

願わくば本件に関しては、自民党も民主党も党議拘束を外し、議員個人が自らの信じるところに従ってオープンで徹底的な討論がなされることを切望致します。


さて、この問題は先のシーファー大使と民主党小沢代表との、いわば公開討論により国民的関心も大いに高まり、また各メディアも賛否両論さまざまに報道しているところですが、私に言わせれば正確性を欠く解説・主張も多いため、国民がことの本質を見誤ってしまうことを大いに危惧しています。


そこで以下、先ず「テロ特措法」を巡る事実関係を私なりに整理し、その上で今後どうすべきかについての私見を述べさせて頂きます。


先ず上記「正確性を欠く解説・主張」の代表例として、我が国最大の発行部数を誇る読売新聞の8月9日付け社説『小沢VS米大使 政権担当能力に疑問符がついた』を取り上げ、その問題点を指摘したいと思います。

社説は、

   『海自の活動は、多国籍軍のテロ掃討作戦の一環である。
    2001年9月の米同時テロ後に採択された安保理決議1368に
    基づいている。
    アフガン国内で米英加韓など約20ヵ国が、インド洋では
    日米英仏独パキスタンなど8カ国の17隻がそれぞれ活動して
    いる。
    テロ掃討作戦は、小沢代表が言うような「米国の戦争」ではない。
    国際社会による対テロ共同行動である』

と述べていますが、これは事実誤認を含む極めて粗雑で一方的な解説と言えます。

社説中の、『多国籍軍のテロ掃討作戦』とは、アメリカ主導の「不朽の自由作戦(OEF)」を指していると思われますが、そもそもOEFは安保理の承認を得たものではありません。

9.11事件の翌日に採択された安保理決議1368は、「テロに対し世界各国は断固として戦う」という固い決意を表明したものですが、OEFなどの個別行動を自動的に容認するものでは全くありません。

海自の活動も、安保理決議1368で認められたもので無いことは自明です。

本来アメリカは、2001年10月のアフガン空爆の前に新たな安保理決議を求めるべきでした。
しかし、中国が拒否権を発動すると予想されたこともあり、アメリカは安保理に諮らず、「個別的自衛権」を発動し開戦に踏み切りました。

小沢代表が、『これはアメリカが勝手に始めた戦争だ』と言うのはこの経緯を指していると思われます。
(もっとも、あの時点でアメリカがアフガニスタンに対し本当に個別的自衛権を発動し得るかに関しては国際社会にも多少の異論があるところです。
この点、その1年半後のアメリカのイラク攻撃に関しては、個別的自衛権の発動はとても認められない、結果的にあれはアメリカの「侵略戦争」であったというのが今や国際的コンセンサスとなっています)


OEFには、社説にあるように、NATO諸国など20カ国以上が参加していますが、各国の参加の根拠は、アメリカとの「集団的自衛権」の行使です。
アメリカの「個別的自衛権」が認められるとすれば、同盟国の「集団的自衛権」も当然認められますので、これらの国々の活動は正当性があることになります。


それにひき替え海自の活動には正当性があるでしょうか?


安保理の承認も得ず、「集団的自衛権」の行使は憲法解釈上認められないというなかで、自衛隊を海外に派遣することは本当に許されるのでしょうか? 正当でしょうか?

私は、「テロ特措法」も、「イラク特措法」同様、正当性を欠く法律、憲法に違反する法律と考えています(もちろん、自衛隊を遂に戦場にまで派遣してしまった「イラク特措法」の方が、罪が圧倒的に大きいことは言うまでもありませんが)

結局のところ「テロ特措法」も「イラク特措法」も、単に「ブッシュのアメリカ」に追従するためだけの法律と断定せざるを得ません。

尚、読売社説では詳しく触れていませんが、アフガニスタンでは上記OEF以外に、約40カ国、4万人が、「国際治安支援部隊(ISAF)」の名の下、広義のPKO活動を展開しています。
これぞまさに『国際社会による対テロ共同行動』と言えますが、この活動は2001年12月採択の安保理決議1386で承認されたものであり、OEFとは本質的に異なる活動と言えます。

この点も正しく認識しておく必要があると思っています。


以上が本件を巡る事実関係ですが、しからば我が国はこの局面でいかにしたら良いのか?  以下は私の結論です。

(1) テロ特措法は延長せず失効させる。

    それは「対米追従路線」の変更を意味し、「ブッシュのアメリカ」
    が快く思わぬことは容易に想像されます。しかし、長期的視点
    から日米関係を見た場合、この路線変更は必要不可欠であると
    確信します。
    後生の歴史家は、「小泉時代の日米関係は極めて異常であった。
    2007年の参院選結果が、日米関係を正常なものに戻した」
    と総括すると固く信じています。

(2) テロ特措法に代え、我が国として憲法の規定を順守しながら、
   いかに「対テロ共同行動」に参加するかに関し、徹底的に研究
   ・議論を行った上で、必要な新法を制定する。

    一案として、上記安保理決議1386を、我が国も参加出来る
    ような内容に修正出来ぬか検討することを提案したいと思います。
   (1386は、2003年の決議1510により内容修正
    された実績あり)


結局のところ、今我が国にとって最も大切なことは、憲法の理念の下、原理原則を明確にし、それを内外に発信・説明し、それに沿って行動をすることであると考えます。

そういうスタンスこそが、たとえ一時的に「ブッシュのアメリカ」との関係がぎくしゃくしたとしても、「ブッシュ以外のアメリカ」や、アジア各国を始めとする世界の国々の信頼を得る早道であると確信します。

各党・各議員の叡智が結集されることを大いに期待したいと思います。  
                      
                             (完)

     

2007年08月24日

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