Vol.37「美しい国」なら死刑の廃止を!

[死刑制度関連]

昨年12月25日のわが国における死刑囚4名の一斉処刑と、その数日後のフセイン元大統領の処刑はヨーロッパの人々に極めて大きな衝撃を与えました。

特にわが国における処刑がクリスマス当日であったことが格別ショッキングだったようです。
ヨーロッパでわが国のイメージが、また大きく傷つきました。


もっともわが国の当局者は、「クリスマス当日の処刑」を意識していなかったと思われますし、大半の国民もそのニュースがヨーロッパの人々に大変なショックを与えたということを意識していないと思われます。
残念ながらわが国のメディアはヨーロッパのニュース・動きを十分に伝えないからです。


ちょうどその頃ヨーロッパでは、フランス政府が死刑を禁止する条項を憲法に明記する方針であることが報道され、死刑に対する関心が改めて高まってきていました。

フランスでは、欧州評議会(CE)や欧州連合(EU)へのコミットメントから、死刑が復活する可能性は皆無と考えられるものの、それでもなお敢えて憲法に明記せんとするのは、【人権上、死刑は絶対に許されない】という強いメッセージを国内外に発信するためと受け止められています。


そのさなかの日本とイラクの処刑のニュースであったため、対照的に一段と際だったことは間違いありません。


さて、死刑廃止の流れが世界的に加速し始めたのは、1985年、欧州評議会が平時における死刑廃止を定めた人権条約を発効させてからですが、その後1989年、国連が死刑廃止条約を採択しその流れを強く後押ししました。

その結果、1980年には死刑を廃止していた国37カ国、存置していた国128カ国であったものが、昨年末には死刑を廃止している国128カ国、存置している国69カ国と完全に逆転し、死刑廃止が世界の潮流であることが実感されます。

死刑存置69カ国中、先進国はアメリカと日本の二カ国のみですが、実はアメリカは州毎に対応が分かれており、12州と1特別区(ワシントンDC)では既に廃止済みです。
残る38州では存置していますが、うち10州では死刑制度を見直すため執行が停止されており、アメリカでも死刑廃止州が増加する方向にあると言えます。

一方アジアでも、ミャンマー・カンボジア・フィリピンなどで廃止済み。

韓国では既に1998年以降死刑の執行が停止されており、死刑廃止法案も国会に提出済みで、2005年からは実質的な審議も始まっています。

また台湾でも政府が死刑廃止の方向性を表明しており、「死刑廃止」という世界潮流が着実にアジアにも押し寄せてきていることが読み取れます。


そんななか、わが国では「どんな場合でも死刑は廃止すべき」という意見の持主が着実に減少してきており、直近の内閣府「基本的法制度に関する世論調査」では遂に6.0%にまで低下しています(この世論調査結果を受けての私の問題提起は、コラムVol.17『死刑を永久に存置しますか? 世界の潮流に逆らって・・・』)をご参照下さい)

上述の如く、死刑廃止は間違いなく世界の潮流であるにも拘わらず、わが国の世論がそれと逆行していることの背景には、いろいろなことが考えられます。

しかし、その点は別の機会に譲るとして、この場では、死刑制度という最重要な人権問題を世論に委ねたまま世界の潮流に逆らってこのまま放置しておいて本当に良いのか、国民全員が、なかんずく政治のリーダーが改めて真剣に考えるべきであることを強く訴えたいと思います。

特に経済界・産業界の方々は、この問題に概ね無関心ですが、放置すればいずれは必ず自分たちに跳ね返ってくることを冷静に認識頂く必要があると考えています。


1981年、フランスのミッテラン大統領は、60%を超す世論の反対にも拘わらず死刑廃止を決断しました。その先見性には今更ながら敬服します。


明後年からはわが国でも裁判員制度がスタートし、一般国民が凶悪犯罪を裁くことになります。


わが国の政治や経済のリーダーは、今こそ世界史的観点に立ってこの問題に強い関心を持ち、わが国も死刑廃止に向け一歩を踏み出すべく強力なイチシアチブを取って頂きたいものです。


「人の命は重くかけがえがない。国家であっても人を殺すことは許されない」という考え方が今や世界の常識になっているなか、死刑を存置させたまま【美しい国】などと言っても世界の嘲笑を買うだけであることを、国民全員が冷静に認識すべきであると考えます。


最後に、死刑囚たちの俳句集『異空間の俳句たち』より、無実を訴えながら処刑されていったひとりの男の句を記します。

        叫びたし 寒満月の 割れるほど

                              (完)

 
 

2007年01月20日

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