Vol.31「生殖補助医療」に関する早期法整備を望む(その3)〜今「政治の決意」が問われている

[その他生命倫理関連]

タレントの向井亜紀さんと元プロレスラー高田延彦さんご夫妻の、米国における「代理出産」を巡る訴訟事件、そしてその件に触発され向井ご夫妻を応援したいとの主旨で、長野県の医師による「娘の代理で孫を出産」の事例の公表など、「代理出産」に関する世の中の関心が一挙に高まってきました。


10月17日〜18日の主要紙社説は、この問題をこぞって取り上げいずれも「早期法整備」の必要性を訴えています。

また、安倍総理を始め、官房長官・法務大臣・厚生労働大臣なども、この件につきそれぞれ言及され、積極的に早期法整備に取り組む旨の所感を表明されました。

しかし率直な印象としては、政府として腹を据えてこれに取り組むという意気込みは感じられず、取り敢えずの時間稼ぎ的なコメントと思わずにはいられません。


私がそのように感ずる理由は、主として次の二点です。


(1)「代理出産」「死後生殖」といった、【法律が全く想定をしていない生命の誕生】については、数年以上前から大きな問題となっており、司法からも早期立法化を求める悲痛とも呼べるメッセージが過去一度ならず発せられています。

にもかかわらず政府・国会はこれまで『意見集約が困難』との理由で法整備を先送りしてきており、それが今回の事例で急に進展するとは考えにくいこと。


(2)「代理出産」に関し厚労大臣は、『世論は次第にこれを認める方向に動いているようにも思える。世論動向も見極めながら早期法整備を進めたい』との考えを表明されましたが、それは「世論動向見極め」を口実にまたまた立法化を先送りする結果につながると考えられること。

「代理出産」や「死後生殖」といった【生殖補助医療】全般に関する立法化は、欧米諸国で既に完了しています。
それぞれの国で色々な意見があったことは想像に難くありませんが、ともあれ先進諸国ではとっくに立法化済みであるという事実を、私たちは厳粛に受け止める必要があると思っています。


少なくともこの件に関する限りわが国は【立法化後進国】であり、為政者はこのことを恥ずべきであると考えています。


【立法化後進国】の最大の犠牲者は、法律無きところに生命を受けた子供であることは論を待ちません。
生まれてくる子供が法律未整備であるがために社会的地位が不安定となりもろもろの不利益を被る事態は一刻も早く解消されるべきです。


約一年前、私は「死後生殖認知訴訟」に係わる東京地裁決定を受け、《「死後生殖」の法の網を!! 〜「生殖補助医療」に関する早期法整備を望む〜代表者コラム「その他生命倫理関係」カテゴリー、Vol.22》と題する主張をこの場にアップし、関係各機関などにも訴えました。

そこでは「生殖補助医療」に関する、日本産科婦人科学会の会告や、厚生労働審議会の部会における「報告書」にも触れつつ、本件に関するかなり慎重・保守的な私の意見を述べました。


しかしながら、価値観が大きく変わりつつある今の世の中、私は自分の考えに拘泥するつもりはありません。
私の最大の眼目は、欧米先進国同様一日も早く法整備をすべきというところにあり、「無法状態」よりは、自分とは意見が違うものであっても「立法化」されることの方を望みます。

今回の事態を真剣に受け止め、政府・国会が口先だけでなく腹を据え、政治的リスクを取って、生殖補助医療に関する【立法化後進国】から一刻も早く離陸することを強く求めるものです。
                              (完)

2006年10月26日

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