「集団的自衛権」の行使論議に思う

[石井和希]

自民党総裁選の論戦を通じ明確になってきたことは、安倍晋三氏は現憲法のままでも、解釈を変えることにより集団的自衛権を行使出来るようにしたいと考えていることである。

それはこれまでの永年の政府解釈を180度変えることであるが、そういう考え方の持ち主を国民がこの国の次期首相として圧倒的に支持しているという現実に対し筆者は得も言われぬ恐怖心を感ずるものである。

安倍氏の考えの主旨は、「この問題を巡る状況は刻々と変わってきている。例えば今インド洋では、海上自衛隊が米国艦隊に給油をしているし、つい先頃までは陸上自衛隊がサマワに駐屯していた。その時海自が攻撃されたら米軍は海自を守ってくれる、陸自が攻撃されたら英・豪・オランダ軍が守ってくれる。しかし逆に、米軍や英・豪・オランダ軍が攻撃をされても自衛隊は一切武力行使をしない、出来ないという現実・制約は、いかにもおかしく非常識。憲法解釈は、これまで同様、事態の変化に合わせ柔軟に変えるべきであり、集団的自衛権の行使問題もしかり」というものである。

まさに驚くべき牽強付会である。

我々は今冷静に、海上自衛隊インド洋派遣時の国会論議を、また、陸上自衛隊サマワ派遣時の「戦闘地域・非戦闘地域」の論議を想起すべきである。


『派遣先で自衛隊が敵から攻撃を受けるような事態は考えられない。万が一にもそんな状況になったら直ちに撤収する。自衛隊が海外で武力行使を迫られる様な事態は想定していない』というのが政府の説明であった。その説明を聞いて最も安堵したのは、自衛隊員のご家族であったし、また国民の多くも、内心なんだか危ないなと本能的には感じつつも、『ま、それならしょうが無いか、小泉さんがそう言うなら、、、、、』と思って、米国の要請だけによる、国連決議に基づかない初の自衛隊海外派遣に対し明示的には反対をしなかったのである。


それが今や、上記安倍氏の発言の如く『海外にいる自衛隊が敵から攻撃を受けた場合』を前提に議論が進みつつある。


これまでの解釈改憲同様、まさに“ドボドボと更に泥沼にはまって行く”プロセスであるが、これ以上解釈改憲を続けることはもういい加減に断固止めるべきである。(尚、この点谷垣氏は、『集団的自衛権の行使は、解釈変更では無く憲法改正によって行うべきである』と明言しており安倍氏よりはマッチベターであるが、筆者は自衛隊の海外に於ける武力行使を可能にするような改憲にも反対である)

ところで、筆者が本当に恐いと思うのは安倍氏のソフトムードである。
「安倍さん、素敵!!」とご婦人方の受けは極めて良いが、本当は極めて危険な思想の持ち主であると思われる。そこが心配である。


この国はいずれ再び戦争を始めるのでは無かろうか? 
「安倍さん素敵!!」と声を上げているご婦人方は、このまま行くといずれ将来、自分達の息子が再び戦場に送られる可能性があることを感じていないのであろうか?

アメリカから、【Show the Flag!!】 (旗幟鮮明にしろ)と脅されインド洋に海自を出し、【Boots on the Ground!!】(戦場に軍靴を)と唆されサマワに陸自を出した5年間の小泉時代、それが今ようやく終わらんとしている。


しかし、このままでは次の安倍時代のうちに、【Blood for world peace!!】 (世界平和のために血を流せ)との美辞に惑わされ、喜々として世界中の戦場に自衛隊員を送ることが現実となるのでは無かろうか?

筆者の心配が杞憂に終わることを祈るばかりである。 

                       石井和希(ジャーナリスト)

2006年09月12日

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