Vol.23 杉浦法相の就任会見時発言に思う~一死刑廃止論者より

[死刑制度関連]

私は死刑廃止論者です。

我が国でも一日も早く刑法が改正され、他先進国同様、死刑が廃止されることを強く望むものです。
そうした私の思いを、このコラムでも既に二度にわたり記させて頂きました(vol.5「死刑を廃止し、終身刑の新設を」及び vol.17「死刑を永久に存置しますか? 世界の潮流に逆らって・・・」

ただ、私は死刑廃止論者のなかでは少数意見の持主です。

それは私が、確定死刑囚への死刑執行に対し積極的には抗議行動をしないどころか、現在の法律の下では、執行は、残念ではあるもののやむを得ないとの意見の持ち主であり、また、例えばオウム麻原被告のような著しく重大な凶悪犯罪者に対しては、死刑判決が妥当と考えているためです。


我が国の刑法では、殺人犯等への極刑は死刑と定めてあり、また刑事訴訟法では、法務大臣は、規定の状況下で無い限りは、死刑判決確定後6ヶ月以内にその執行命令を出すことが定められています。

法律でそのように定められている以上、(死刑廃止論者の私としては心が大きく痛むものの)、極悪非道の殺人犯に死刑を宣告し、法の定めに従ってそれを粛々と執行することは、法治国家としては至極当然と考えています。
そうでなければ国家としての秩序が守れなくなることにも繋がりかねません。


そういう考え方に立てば、『死刑執行命令書にはサインをしない』という、今回の杉浦(新)法務大臣の就任会見における発言は、(大方の死刑廃止論者からは喝采を浴びましたが)、私は法治国家の法務大臣の就任第一声としては極めて異例かつ不適切であると考えています(もっともその後、発言は大臣としてのものでは無く個人の心情を吐露したものであるとして事実上撤回をされましたが)


しかし一方で私は、杉浦大臣のように、ご自身の長年の弁護士体験から得られた、死刑に対する明確な問題意識と深い洞察をお持ちの方が、この局面で法務大臣に就任されたことに対し、大変大きな期待を抱いています。


上記vol.17で記しましたように、世論調査によれば、我が国では死刑を廃止すべしという意見の持ち主は着実にしかも大幅に減少してきており、このままでは、死刑が廃止になることは殆ど絶望的な感じがします。

しかし、世論というものは、時には為政者が国民に働きかけ、啓蒙し、「正しい方向」に導くべきものと考えます。
「正しい方向」とは何か、軽々に判断すべきものではありませんが、少なくともこと死刑に関する限り、その廃止は歴史の必然であり、世界の潮流であり、「正しい方向」と断定しても良いと信じてい ます。

杉浦大臣に是非お願いしたいことは『我が国の世論は死刑存置が大勢』として、この問題をそのまま放置するのではなく、

     『たしかに目下の世論はそうであるものの、世界の流れは
      明らかに死刑廃止に向かっている。イスラム国トルコで
      さえ廃止を決めた。韓国も廃止に向け既に国会で議論が
      始まっている。一方で、2009年からは我が国でも、
      裁判員制度が導入される。
      国民の皆さん、そういう状況下、死刑の存廃に関し、
      改めて、感情的にならず冷静に、今一度議論しようでは
      ありませんか』

と問題提起されることを切望するものです。


杉浦大臣がご自身の信条と心情に基づき、死刑廃止に向け強力なリーダーシップを発揮されることを強く期待してやみません。
我が国が、この面でも、一日も早く先進国入りを果たすために。 (完)

2005年11月25日

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