Vol.5 死刑を廃止し、終身刑の新設を

[死刑制度関連]

先進国のなかで死刑制度が存置しているのは日本と米国だけです。


もっとも米国は州により制度が異なり、十を超える州では既に死刑が廃止されていますので、国全体として死刑制度が存置している先進国はわが国だけということになります。

わが国には、わが国固有の歴史と文化・伝統があり、欧米諸国と異なった考え方や制度があることそのものは、決して非難されることではなく、それが日本人の叡智の現れである場合も多々あります。

例えばわが国では欧米諸国と比べ「脳死移植」がなかなか進みませんが、私は、これは、欧米人と日本人の死生観の違いによるものではないかと考えており、移植が進まないことが無知や後進性を示すものでは全く無いと考えております。

しかし、こと死刑制度に関しては、残念ながらわが国は遅れていると断ぜざるを得ず、他先進諸国と異なっていることを恥ずべき状況と考えています。

一日も早くこれを廃止し、代わりに「終身刑」を新設すべきと思います。

死刑(「人を殺せば殺される」という同害刑)の存置賛成論はほぼ次の四点が論拠となっています。


  (1)社会正義の実現のため。
  (2)被害者側の感情の慰謝のため。
  (3)凶悪犯罪の抑止力として。
  (4)死刑のすぐ下の刑である「無期懲役刑」は仮釈放もあり、
     軽過ぎるため。


いずれもそれなりに説得力があり、十分理解できるところであります。

特に全くいわれも無く身内の方を殺されたご遺族が、「犯人を自分の手で殺してやりたいほど憎い。どうしても極刑にして欲しい」と要望されるお気持ちは痛いほどよく解ります。

また、オウム事件や大阪池田小学校事件などといった未曾有の凶悪事件を目の当たりにするにつけ、死刑制度を廃止することにはとても賛成出来ないという意見がむしろ強まりつつあるようにも思います。

しかし、私は、やはり死刑制度は一日も早く廃止すべきとの意見の持ち主です。


論拠は唯一つ、「人を殺すということは、いついかなる場合であっても、たとえ国家による場合であれ、絶対に悪」と考えているためです。

「国家には、人を殺す権利は本来与えられていない」「国家であっても、死刑という名の下に自国民を殺したり、戦争という名の下で他国民を殺すことは絶対に許されない」と固く信じています。


また「国家が人を殺す」といっても、実際にそれを実行するのは、死刑の場合は刑務官の方々、戦争の場合は兵士という、いずれも個人です。

この方々の魂の葛藤と衝撃たるや想像を絶するものがありましょう。「死刑」も「戦争」もやはり絶対悪です。

仏教の五つの戒めの一番目は「不殺生戒」(生きとし生けるものは殺してはいけない)です。

もっとも、現代社会でこの戒めを完璧に実行することはかなり無理があります。

しかし、少なくとも「人」を殺すことは、いついかなる場合でも絶対にしてはいけないという戒めだけは世界中にもっともっと広まって欲しいと切に願っています。

それが徹底されることによって この世から戦争が無くなることにも繋がってゆくものと考えます。


しかし一方で、「死刑」の一つ下の刑である「無期懲役刑」と「死刑」との間には落差が大き過ぎることも事実です。


自分の家族を殺された方々からすれば、憎んでも憎み足りない殺人犯が、十年で仮釈放が認められ、再び世の中に出てくることはとても許せないというお気持ちかと思いますし、社会正義上もやはり納得が行きません。


従って、死刑の廃止と引き換えに、わが国でも諸外国同様、「終身刑」(仮釈放なし)を新設すべきと考えます。


さて、ここで「死刑廃止・終身刑新設」を、前記の死刑存置賛成論の四点の論拠に照らして、考えてみたいと思います。


先ず第一点の「社会正義の実現」は、国家が犯人を殺さなくとも、犯人を死ぬまで牢屋に繋ぎ止め償いをさせることによって、十分に実現されるのではないでしょうか。
あるいは、それでもって「社会正義は実現される」と考えるようにしてはどうでしょうか。


「応報刑」という考え方は必要と思いますが、「殺したから殺す」という同害応報をしなければ「正義」は実現できないという考え方は、捨てるべきと考えます。


国を滅ぼされ一族郎党皆殺しにされたにも拘わらず、全てを許してしまったお釈迦様のような真似はとてもとても出来ないとしても、応報はせめて一つ下のレベルまで、「目には目を」「歯には歯を」という同害応報だけは絶対駄目という考え方を徹底させるべきと考えます。

第二点についても、上記と同様に考えます。

もともと被害者側の要望は、必ずしも「犯人を死刑にして欲しい」ということではなく、法律で許される「極刑」を課して欲しいというのが真意だとも感じています。
死刑という刑は存在しないとなれば、ご遺族も極刑である終身刑によって納得されるのではないでしょうか。
もちろん一方で、種々別の形で、物心両面にわたって国や社会が被害者側の感情の慰謝に努める必要があることは論を俟ちません。

第三点の「凶悪犯罪の抑止力」、これは「人を殺すことはいついかなる場合でも絶対に悪であり、許されない」という考え方を徹底することこそが、凶悪犯罪の抑止効果としては圧倒的に大きいと考えています。


死刑制度が存置している国の方が殺人事件が少ないという事実は見当たらないことからも、死刑を殺人事件の抑止力として目的刑・教育刑として捉える考え方は根拠が無いと考えています。

第四点は、終身刑新設により解決と考えます。


超党派の「死刑廃止を推進する議員連盟」(会長亀井静香衆議院議員)の精力的な活動により、来年には国会に「死刑廃止法案パッケージ(仮)」が提出される見込みとなって参りました。


冷静で真剣なる国民的議論を通して、一日も早くわが国から死刑がなくなることを切望します。
                          (完)

2004年01月01日

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